今回から数回に分けて「複合材料のFEM解析に ’Part’ワークベンチでの作業がなぜ必要なのか?」について書いていこうと思う。今日はうまくいかなかった事例から。
まず、FreeCAD FEMワークベンチではオブジェクトが複数ある複合材料のようなモデルの場合、メッシュをオブジェクト毎に作成しなければならない。
例えば下記のような2層の積層板の場合、オブジェクト ’_layerA’ には ’FEMMeshNetgen’ のメッシュ、オブジェクト ’_layerB’ には ’FEMMeshNetgen001’ のメッシュという具合にオブジェクト毎にメッシュを作成する。

その一方で、このようなメッシュの設定が複数あるモデルはFreeCAD FEMワークベンチでは解析ができない。材料設定や境界条件の設定、メッシュ作成を行なった後、解析を実行するため「.Inpファイルの書き出し」を行うと、下記に示すように ‘No mesh object defined in the analysis.’ というエラーメッセージが出て、これ以上進めなくなる。

これを解決するためには、複数のオブジェクトを1つのオブジェクトに統合(merge)する必要がある。統合と言っても2つのオブジェクトを1つに合体させる訳ではなく、グループ化させるようなイメージ。それを実行するのが、’Part’ ワークベンチ。
1つのオブジェクトに統合する方法として、すぐに思いつくのが「結合(Fusion)」。だが結論から言うと、この方法もうまくいかない。
試しに行なった手順は、まず ‘Part’ ワークベンチの「コンボビュー」にある2つのオブジェクト ‘_layerA’ と ‘_layerB’ をクリックして、メニューの「パート」<「ブーリアン」<「結合」、またはツールバーの「結合」アイコンをクリック。すると’Fusion’ の下に ‘_layerA’ と ‘_layerB’ が移動する。


‘FEM’ ワークベンチに入り、材料設定や境界条件の設定、メッシュ作成を行なう。材料設定では、結合した個々のオブジェクトに別々の材料が指定できる。個々の設定の仕方はこちらのブログを参照。

メッシュは「コンボビュー」の ’Fusion’ をクリックしてから、メニューの ‘Mesh’ > ‘FEM Mesh from shape by Netgen’ またはツールバーの ‘FEM Mesh from shape by Netgen’ アイコンをクリックして作成する。そうすると、‘_layerA’ と ‘_layerB’ の両方にメッシュが作成される。


以上を行なった後、解析を実行するため「.Inpファイルの書き出し」を行う。ここまでは問題なくできる。問題はその後。
‘Run CalculiX’ をクリックして解析実行。しかし、ボックスに ’CalculiX execute error’ というエラーメッセージが表示される。ボックスのメッセージをスクロールして読むでみると、’*ERROR in calinput: no material was assigned to element 14946’ というようなメッセージが数多く出ている。「エレメントに材料が設定されていない」と言う意味だが、材料設定でオブジェクトにはしっかり材料を設定しているし、オブジェクトにはメッシュも作成してある。


この原因ははっきりとわからないが、ネットの情報を調査すると「結合(Fusion)ではオブジェクトの接合面が共有化されず、ノードも共有化されない*1」とか「結合(Fusion)だとオブジェクト境界のメッシュが凸凹になり、そのメッシュに材料がうまく割当てられていない*2」などの報告がある。
ということで、複数のオブジェクトを「結合(Fusion)」させてもFEM解析はできないようだ。
次の対応策として、モデルを断片化(BooleanFragments)する方法を次回のブログで紹介する。
*1: FreeCAD FEM Tutorial - Unterschiedliche Materialien in einer linear mechanischen Analyse (YouTube: 7:20~7:50)
*2: FreeCADV0.19のFEMワークベンチを使った構造解析事例の紹介 (YouTube: 9:50~10:15)
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