'08 早春の天草と通潤橋⑤ 赤瀬〜山都

2018年8月27日月曜日

2008年 九州 自転車旅

5日目 2008年3月15日(土)

朝起きて窓の外をみると雲ひとつない快晴。いいぞー

目の前が島原湾なのは昨日と変わりないが、海の向こうに昨日全く見えなかった雲仙普賢岳がドカーンと見える。ズッシリ巨大な生き物が海に横たわっているようにも見える。なんかスゲー

大火砕流の跡もクッキリみえ、海の向こうなのにスゴい迫力。相当な噴火だったことがわかる。

島原湾の向こうに雲仙普賢岳
島原湾の向こうに雲仙普賢岳

目を東に向けると、こちらにも普賢岳に相対するように海の向こうに2つの大きな山が見える。はじめは阿蘇五岳の一部かと思ったが、ちょっとそれは遠すぎる。あとで調べると金峰山と熊ノ岳のようだった。

今日の予定は、宇土半島の北海岸線を走る国道57号線で宇土へ、宇城を経由して国道218号線で山都町の通潤橋に向かう。これまでの海沿いから一転、内陸の山岳ツーリングとなる。

金峰山と熊ノ岳?
金峰山と熊ノ岳?

天草街道

8:30 宿を出発。

左手に島原湾を見ながら、国道57号線 天草街道を東へ走る。また国道に愛称がついた。

8:38 道の駅 宇土マリーナに到着。

ここからも雲仙普賢岳がクッキリ。天気が良くて眺めがイイので写真撮りまくり。

宇土マリーナの向こうにも雲仙普賢岳
宇土マリーナの向こうにも雲仙普賢岳

道の駅を出発すると路肩に「眠るな」の標識がいくつか続く。「朝から若干興奮気味なので全然眠くないんだが…、居眠りするなよ、後ろの車!」

「眠るな」標識
「眠るな」標識

8:58 御興来(おこしき)海岸に到着。

鬼の洗濯板のような岩が重なり合っている。海の向こうにはまだまだ雲仙普賢岳。いい景色。

御輿来海岸の向こうにもまだまだ雲仙普賢岳
御輿来海岸の向こうにもまだまだ雲仙普賢岳

天草街道の右側(南側)にはJR三角線が並走していて、たまに1輌か2輌の電車が通り過ぎていく。鉄ちゃんじゃありません。

住吉駅で海岸線から離れ、田園地帯を入る。天草街道は交通量と路肩の状況が少し心配だったが、ここまでは特に走りづらいところはない。住宅地に入り徐々に交通量が増えてくる。

宇土の市街地に入る。天草街道から県道14号線に入るつもりだったが、天草街道はその直前にJR越えの高架橋になっている。しかも、路肩狭く歩道もなく交通量はかなり多い。「うゎー、イヤな感じになってきた」

走りづらそうなので、高架橋の直前で左折して脇道に逃げ込む。街中の狭い道に迷い込む。交通量が少ないので高架橋を通るより大分マシだろう。

ぐるっとまわり込み、JR三角線の踏切を越え「東はこっちの方だ」と方向だけ意識して、街中の道を適当に進んでいく。すると、跨線橋のような高架橋がまた出てくる。こちらは路肩が広いので安全そう。高架橋を越えると「八代⑭➡︎」の案内標識が出てくる。

ツーリングマップルで場所を確認する。ここは境目町の交差点のようだ。急遽、道を変えて適当に進んできたが、あっさり県道14号線に出れた。よし、いいぞー。

右折して県道14号線を南下する。国道266号線を越え、県道181号線へ左折し、東へ進む。街中の道なので楽しくはないが、順調、順調。

国道218号線

10:50 国道3号線の高架を抜け、国道218号線に出る。よし来たー。

あとはもう国道218号線を山都町までひた走るのみ。

県道14号線から国道218号線へも案内標識を見落とさずに走ったので、あっさり抜けれた。

ここから先はだんだんカントリーロードになって徐々に高度を上げていくだろう。のんびり走れそうな気がする。

ただちょっと気になるところがあって、一つ目はツーリングマップルにこの先の国道218号線は「交通量多い」と書いてあること、二つ目は霊台橋を過ぎるいくつかトンネルが出てくること。とりあえず行ってみるしかない。

県道32号線の交差の手前にある「アグリパーク」でトイレ休憩。

11:33 美里町に入る。

霊台橋まで13km、通潤橋まで26km。すっかりのどかな田園地帯が広がっている。春っぽくていい感じ。

11:56 国道443号線との交差点に到着。

「日本一の石段3333段」のモニュメントがある。ここを右折した9km先に本物の石段があるらしいが、特に行きたいと思わないので国道218号線を直進する。ごめんなさい。

「日本一の石段 3333段」のモニュメント
「日本一の石段 3333段」のモニュメント

ここまで交通量は全然少ない。多そうな道にも見えなかった。ツーリングマップルの情報とは全然違ったが、まぁとりあえずよかった。

砥用トンネルの手前で国道の右手に小さい川が流れているのに気づく。近くまで下りてみると、少し先の川に古い石橋かかっている。大窪橋というらしく、ツーリングマップルによれば、このあたりから「石橋探訪ルート」が始まるらしい。「ふぅ~ん、そうなのか」

霊台橋や通潤橋は知っているが、それ以外にもいろいろ橋があるらしい。

国道218号線
国道218号線

12:25 砥用トンネルを通過。

右側に歩道があるので問題なし。砥用の街を通り抜ける。

12:42 霊台橋に到着。

国道218号線の橋と並んで、立派でキレイなアーチ型の石橋が架かっている。石の積み上げだけで滑らかな曲線を出している。「見事!」

霊台橋
霊台橋

説明板によると、霊台橋の全長は90mで、昭和41年までバスやトラックも走っていたとのこと。完成から約160年も経っているが、今も問題なく歩けて年月を感じさせない。

隣の国道218号線には緑色の橋が架かっているのだが、霊台橋の景観を損ねているようにみえる。緑色なのは緑川に架かっているからか?

緑川に降りてみる。下から見る霊台橋も滑らかな曲線が出ていてキレイだ。でも逆光で写真は全然ダメ。

霊台橋が架かる緑川
霊台橋が架かる緑川

霊台橋を出発。

ここまでせいぜい2,3%ぐらいの勾配だったが、ここから5%越えの山道に入る。

馬入トンネルは歩道が狭いので車道をいく。車が来ないのを見計らって突入。車に追いかけられることなく、トンネルを出る。交通量が少ないので助かる。やれやれ。

途中で道路工事している場所もあるが、特に問題なく進む。

県道220号線との分岐を通過。勾配は7,8%ぐらいになり、さらにキツくなる。問題なし。

13:54 万坂峠への上り坂で、対向車線から自転車が1台下ってくる。軽装なので地元の人だろう。

気づかないうちに標高も一気に上がっていて、霊台橋では横を流れていた緑川や緑川ダムがはるか眼下に見える。「おー、いつの間に」

眼下の緑川ダム
眼下の緑川ダム

14:10 万坂トンネルに到着。

ここは標高470mの万坂峠。万坂トンネルがピークであとは下り。万坂トンネルは通潤橋までのトンネルで一番長く、馬入トンネル同様、歩道は狭くて走れない。が、交通量が少ないので車道を走り抜け、山都町に入る。よかったよかった。

坂を一気に下っていく。

14:29 内大臣への分岐に到着。

「内大臣」…昔、そんな大臣さんがいたような変わった地名だな。

ツーリングマップルによれば、内大臣には「目もくらむ高さ 静かな山里に巨大な橋」の内大臣橋があるらしい。が、時間がないのでここはパスする。残念、行きたかった…。高いところ好きバカ。

緩い上り坂の後、牧野トンネルの手前、国道218号線が大きく左にカーブする直前で、ついに「通潤橋➡︎」の案内標識が出てくる。

ただ通潤橋は国道218号線をあと1, 2kmぐらい進んだ先と思っていたので一瞬どうしようか迷う。ツーリングマップルをみると右の道が書いてあるので、案内標識に従い右折する。

しばらく走ると住宅街に入る。2つ目の丁字路で右側に「通潤橋➡︎」の小さい標識を発見、右折する。

突き当りの県道180号線に出ると今度は「⬅︎通潤橋」の案内標識があるので左折する。

通潤橋

左カーブの手前で、道の向こうに大きな石橋が見えてくる。「あれかっ!」

14:57 通潤橋に到着。

隣接する「道の駅 通潤橋」に自転車を止めて近くまで見に行く。

通潤橋は、この周辺の台地に水を送るために架けられた通水橋で、日本最大級の石造りアーチ水路橋。橋中央部からの放水が有名で、その放水写真を見て「これは見に行かないと」と思って今回の自転車旅に無理やりぶち込んだ。

事前に調べたところ、放水は5月頃から夏場までの土日に毎日行われているが、それ以外は不定期。また、申込めば放水してくれる有料(1回5,000円だったと思う)の「観光放水」というものもある。

今日は3月の平日なので「観光放水」しか期待できない。団体で申込めば一人当たりの負担も少ないが、一人だと出費がデカすぎるので申込むつもりはない。なので放水を見るのはちょっと無理だろうなぁと思いつつ見に来た。誰か申し込めー

通潤橋
通潤橋

橋までは遊歩道が整備されていて、周りは棚田になっている。観光客は比較的多く、橋の上を歩いている人も見える。

橋の近くまで来ると、ここも「霊台橋」と同じように石の積み上げだけで滑らかなアーチ曲線を出している。すごい。

橋の左手に階段がある。ここから橋の上に行けそうなので登る。登っている途中、橋の上を見ると、中央に青い作業服を着た人が見え、何やら作業をしている。「何してるんだ?」

と、次の瞬間、橋の中央からドバーッと水が勢いよく出てきた。なんと放水が始まったのだ!「おおっーー」

見れるとは全然思っていなかったので、思わず声が出てしまう。慌てて写真も撮り始める。突然の放水に周りの人たちからも「ウヮー!」っと歓声が上がる。

通潤橋の放水①
通潤橋の放水①

橋の上に登ろうとしていたが、一旦おりて下から写真を撮る。下からだとなかなかの迫力だ。「すげぇー」

通潤橋の放水②
通潤橋の放水②

改めてよくみると橋の後ろ側からも放水していて、前側は上下2箇所の穴から放水している。川面には虹も出てくる。

天気もよく、青空の中、豪快な放水が見れて満足満足。

通潤橋の放水③
通潤橋の放水③

いつまで放水しているのかわからないので、急いで橋の上までのぼり、今度は上から見てみることにする。

橋の上は幅が5,6mぐらいで柵などない。地面には縦に3本の石畳が走っている。

橋の後ろ側は1箇所の穴から放水していて、前側より勢いよく水が出ている。放水口が1箇所に集中しているせいだろう。

通潤橋の放水④
通潤橋の放水④

あとで知ったが、この石畳に見えたのは石の水路で、3本のうち2本が表側、1本が裏側へ放水している。

放水口の近くまで行こうとするが、柵がないのでなかなか勇気がいる。橋の高さは20mだ。写真を撮る時は少ししゃがみこんで覗き込むようにする。そうしないと落ちそうでちょっと怖い。落ちたら確実に死ねる。ヤバい。

通潤橋の放水⑤
通潤橋の放水⑤

放水は15分ほどで終わったが、今ここにいる誰かが「観光放水」をお願いしたのだろう。ありがたや。それにしても運がよかった。

通潤橋の裏側にはキレイな棚田が広がっている。この先に「五老ヶ滝」があるようなのでそっちの方に歩いて行ってみる。

15:20 橋の北側から棚田を通って「五老ヶ滝」に向かう。

遊歩道が整備されているが、この辺は農家さんが使う生活道路だろう。天気もよく、暖かく、春を感じさせる陽気の中、景色のいい道を散歩するのも楽しい。通潤橋にはたくさん観光客がいたが、ここまで来る人はあまりいない。

棚田の風景
棚田の風景

15:47「五老ヶ滝」に到着。

アップダウンのある棚田の道を写真を撮りながら、のんびり歩いてきたので「通潤橋」から30分近くかかった。

つり橋からは滝と滝壺がほぼ真正面に見える。これだけ真正面から近くで滝を見れるところもそうないような気もする。なかなかいい眺め。

五老ヶ滝①
五老ヶ滝①

つり橋を渡りきると、滝壺に続く道へ下りる。下に行くと滝壺の近くまで行けて、間近に滝がみれる。水音以外は静か。

五老ヶ滝②
五老ヶ滝②

16:25 南側から通潤橋を渡って、道の駅に戻る。

「通潤橋」、「棚田」、「五老ヶ滝」を周る1時間半程のトレッキングだった。なかなか楽しかったぞ。

今日の予定はこれにて終了、宿へ向かう。今日の宿はここから県道320号線を行った先の街はずれにある。

その前にこの辺で買い物をするため店を探す。県道180号線のすぐ先にヤマザキショップを発見し買い物を済ませる。

県道180号線を戻り「道の駅 通潤橋」の横を少し上ると、右側に宿の看板を発見。「この先、左折2km」と書いてある。

県道320号線

16:46 県道320号線への分岐に到着。

宿の看板に従い、左折して県道320号線に入る。すぐに「国民宿舎・通潤山荘」そして「五老ヶ滝」への標識を通り過ぎる。

県道320号線を進むと道路工事をしている。通れるようだが、道がダートになっている。道も細いし、車も全然通らないので「これ本当に県道320号線?」とちょっと疑ってしまう。

そういえば、ここに来る途中に右に下りる分岐道があった。「あっちが県道320号線だったかな?」と思い、戻って確かめてみる。

しかし、右に下りる道には県道320号線を示す標識はない。

今度は県道180号線と県道320号線の分岐まで戻って確認するも、やはり道は間違えていない。

再び、工事をしているところまで戻り、車を誘導しているお姉さんにダメ元で聞いてみる。

自分  :「この道、県道320号線ですか?」

お姉さん:「ちょっと、わかりません」

工事しているのは地元以外の業者の可能性が高いし、地元の人でも県道の番号までは知らない人も多いだろう。

しょうがない。ただ、この道が県道320号線としか思えないので、お礼を言って工事中のダート道を自転車を押して進む。

さらに棚田の中の下り基調のアップダウンを進む。「こんなところに宿なんかあんのか?」

しばらく走ると、バックミラーにバスが映る。「えっ、こんな狭い道にバス?」

道が狭いのでカーブミラーのある路肩に自転車を止めてやり過す。バスが通ると言うことはそれなりの幹線道路のはずなので、やはり県道320号線なんだろうと思えてくる。

とその時、前にあるカーブミラーの棒の部分に「県道320号線」と書いてあるのが目に入る。「あっ、やっぱり。道は間違っていなかった」。やれやれ、よかった。

17:12 宿に到着。

今日のお宿は「旅館・山翠」。宿の入口には大きな庭と色とりどりの花が咲いているたくさんの鉢植えが置いてある。部屋は8畳の和室で、部屋にも花の鉢植えがあり、気遣いを感じる。

「旅館・山翠」の庭
「旅館・山翠」の庭

トイレとお風呂は共同で、お風呂は温泉。1泊2食付きで8,400円也。自転車は玄関の中に置かせてもらう。あとから到着したお客さんが宿の人に誰の自転車か聞いている声が聞こえてくる。こんなところ自転車で来るアホはあまりいないだろう。

夕食後、買ってきた日本酒「通潤」で乾杯しながら、明日の予定を考える。明日は最終日で熊本空港に向かうが、フライトまで時間が十分ある。

道順は考えていたが、立ち寄るところは全然考えていなかったので、観光マップを見て考える。まず「鮎の瀬大橋」と「鵜の子滝」に行こう。その後、空港に向かい、時間があれば「八勢目鑑橋」を見に行こうと思う。

寝る。

走行時間:5h05m22s 走行距離:68.64km
平均速度:13.4km/h 最高速度:37.9km/h

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