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'08 オロロンライン北上⑦ 豊富温泉〜稚内

2008年 自転車旅 北海道

6日目 2008年7月30日(水) -

今朝はこの旅初の曇天。でも天気予報によると、雨の心配はなく晴れ。

ホテルの朝飯に豊富産の牛乳が出たのだが、この旅の途中まで、豊富は牛乳の生産が盛んなことを知らなかった。これまで牛乳といえば、「道東のほう」というイメージしかなかった。北海道出身のくせに恥ずかしい限り。自分の無知さを改めて知る。

出発前に8月1日の利尻の宿をネットで予約する。これでこの旅の宿の予約は全て完了し、旅の途中でやらないといけないことが一つ減った。だんだん、旅のゴールが近づいていることを実感してくる。まだ終わってほしくはないな。

さて、今日の行程では、最初に「大規模草地牧場」のある山の方に入る。それで念の為、チェックアウトの時にフロントの方に聞いてみる。

自分     :「最近、この周辺でヒグマが出たなんてことは聞いてないですか?」

フロントの女性:「そういえば、何日か前に浜頓別の方で出たらしいとニュースで言ってましたよ」

浜頓別は、豊富の西隣りの町。「やや」と思いつつも、「あっち(浜頓別)のほうには行かないし、まっ大丈夫だろう」と、自分をいいように納得させて、予定通り「大規模草地牧場」に向かうことにする。

9:17 宿を出発。今日は時間があるし、曇天だし、あるところに寄って行こうと思っているので遅めの出発。道道84号線を東に進む。

9:28 道道121号線との分岐で、左折して「大規模草地牧場」方面に向かう。

大規模草地牧場

しばらく坂を上り、下り坂に入ると前が開けて、木のない芝生だけの丘が見えてくる。そして昨日も来た牧場の入口を通過し、「大規模草地牧場」に突入する。右の丘の斜面には、昨日と変わらず牧草ロールが転がっている。

再び坂を上る。その後も予想通りアップダウンが連続する。周囲は木が生えていない牧草地が続く丘陵地なので、なかなか眺望がいい。

牧場の入口から10分ぐらい走ったところの下り坂の途中で、真正面にある丘の緑の斜面に、白黒模様(黒多め)があるのに気づく。

あれはどう見ても放牧している乳牛の群れだ。ようやく牧場の家畜にお目にかかる。

大規模草地牧場①
大規模草地牧場①

そこから、しばらく走ると右前方の丘の上に建物が見えてくる。

「あっ、あれだろう」

9:43 レストハウス(2012年で休止)前に到着。宿を遅めに出発したのは、ここに寄って行くためで、早すぎるとまだ営業していないからだ。

そして、ここに寄ったのは「100円で牛乳飲み放題」があるという情報を事前に得ていたからだ。飲み放題といっても大量に飲むつもりはなく、本場の牧場でうまい牛乳を2,3杯ぐらい飲んでいこうかなと思っていた。それでも100円は十分安いだろうし。

飲み放題だからいって大量に飲んでしまうと、この後に走る予定の、原野しかない道道106号線でエライことになりそうだし…。

レストハウスに向かうため、右に入るや否や、

「本日定休日」

の看板が目に入る。

「うぅ~ん、せっかく来たのに残念、無念…」

仕方がない。

100円で牛乳飲み放題
100円で牛乳飲み放題

レストハウスは、大きな公園のようなところにあり、周りは牧場に囲まれているので、近くに放牧されている乳牛の群れや、遠くにいる数頭の馬の姿も見える。

そんな景色を眺めながら、しばらく休憩して出発する。

その後も、アップダウンが連続する緑の丘陵地を走る。丘のピークでは、丘陵地の凸凹や遠くまで続く牧草地がよく見渡せる。

一面の緑の中に時折、白黒斑点模様のような乳牛の群れ、点在する黄金色の牧草ロールが現れる。あまり広くない囲いの中に数十頭はいる牛の塊も見えたりする。

「牛横断注意」

の道路標識。牧場の中を走る農道ならではの標識だが、道路を横断中の牛の群れに遭遇することはなかった。

眺めがいいので写真を撮るために自転車を止めることが多くなる。アップダウンの連続の割に、眺めがいいこともあり、苦には感じない。

大規模草地牧場②
大規模草地牧場②

これでも眺めは十分いいだが、天気が良ければ、青い空や白い雲が加わり、もっとコントラストが増えて、さらにいい景色だろうと思う。が、今日はまだ曇天のままだ。

レストハウスから25分ほど走ったところで、下り道の両側は森になり、眺望がなくなる。どうやら「大規模草地牧場」は終わったようだ。

「大規模草地牧場」の中を走る落合広域農道は、思っていた以上に眺めがよくて、来てよかった。また天気がいい時に来たいと思う。

下り基調の農道を走り、突き当たりの丁字路に差し掛かる。案内標示には「←国道40号」とある。どうやら道は間違えていなかったようで、多少ホッとする。

すると、その突き当たりに車が5台ほど路駐している。近くには牧草地しかなく、民家は見えない。

「なんだ、この車は?」

と思っていると、その先で人が集まって座っているのが見える。

「ん?なんだ??」

よくみると、突き当たりに神社のお祭りのような「のぼり」が立っている。どうやら、お祭りか何かで地元の人が集まっているようだ。

突き当たりを左折する。

10:36 国道40号線に到着。左折して豊富市街へ戻る。少し雲に隙間が出て、青空が見えてくる。

サロベツ原野

豊富市街で道道444号線に右折する。

住宅街を抜けると牧草地が広がるが、所々に民家が点在しているので、まだ何もない原野というほどではない。

そして、兜沼への分岐がある大きな左カーブを曲がると、向こう先が見えない一直線道路がずっと続いている。

「稚咲内10km」

の案内標識。サロベツ原野を抜けるまで10kmもある。原野しかないので、景色を見ながら、ひたすら走る。雲がとれて、空は晴れ渡ってきた。

11:13「サロベツ原生花園」(2011年に場所を約1.5km東に移して「サロベツ湿原センター」になっている)に到着。自転車を止めるところがないので、入口の看板に立てかけておく。

ビジターセンターを見学。ここサロベツ原野は、サロベツ湿原でもあるが、だんだん乾燥化が進み、湿原が減少していることを知る。笹が生えているのは乾燥化している証拠で、かなり多くなっているとのこと。

2階の窓からは、見えない先までずっと原野が続いている。水辺はなく、あまり湿原のようには見えない。

サロベツ原生花園①
サロベツ原生花園①

外の遊歩道を散策する。

遊歩道は緑一面の中にあるので、開放感があり、風もあって歩いていて気持ちがいい。利尻山はかろーじて肉眼で見える程度。昨日よりさらにうすーくなっている。

歩いている人は少ないが、こちらにも幌延ビジターセンターのように、絵を描いている人がいる。

遊歩道は木道で、湿原の中に踏み入ることは、もちろんできない。なので、近くから見た印象だけだが、やっぱり、あまり湿原のように感じるところはないし、所々に笹が群生しているところもある。花はほとんど咲いていない。

サロベツ原生花園②
サロベツ原生花園②

ぐるっと1周して戻り、ビジターセンターの隣にある「レストハウス サロベツ」で一服。腹が減ったので、「牛乳+いももちのセット?」のような、甘いもの食べる。

11:48「サロベツ原生花園」を出発。再び、原野の中を突っ走る。

道道763号線の分岐を通過、ここからは昨日反対向きに走った道だ。

分岐の先に、本来なら案内標識がありそうなところに「エゾカンゾウと利尻富士」の写真が出ている。今日も、あの写真のようには利尻富士を拝めそうにはない。

道道106号線

12:06 道道106号線に到着、右折して稚内に向かう。稚内まで41km。

道道106号線に入るとあっという間に、人工物はアスファルトと反射灯しかなくなる。周囲は延々続く牧草地と日本海のみ。

15分ほど走ると、それまでずっと海岸線近くを走っていた道道106号線が右へカーブし、少し内陸側に入る。

すると、海側の牧草地にたくさんの牧草ロールが転がり始める。

牧草ロールが転がる草原、その向こうに日本海、青空が広がり、その中を道路が果てしなく続いていて、なかなかの絶景だと思う。何度も立ち止まって写真を撮る。あとは利尻山…。

道道106号線①
道道106号線①

道道106号線を走っていると、道端に白い花をつけた頭でっかちのミョーな形の野草というか雑草をよく見かける。道道106号線だけではなく、夏の北海道、特に郊外の道端や野原でよく見かけるが、本州では見た記憶がない。

あのミョーな形がどうにも気になる。時折、他の雑草の中から、2mぐらいにまで異常にデカく成長したそのミューな形の野草が1本飛び出していたりもして、いささか気味が悪い感じもする。原野も延々と続くので、そのミョーな形の野草も延々と見続けている。

あとで調べると「ノラニンジン」のようにも見えるが、ちょっと違う気もする。よくわからない。

いつの間にか、道路から砂浜も見えるようになる。今までは、道路と海岸の間には小さな丘があって、砂浜までは見えなかった。

12:48 稚内に入る。稚内市街まで30km。

「夜間除雪はしていません」

との案内板。そもそも冬の夜間に、車でここを走るのはかなり危険なように思う。

稚内に入りしばらく走ると、それまで全くもって平坦だった道道106号線に小さなアップダウンが出てくる。周囲も、どこまでも続く原野から、ウネウネした丘陵地に変わり出す。サロベツ原野の終わりが近づいているように感じる。

左の真横には、それまでかなりうすーくしか見えていなかった利尻山が、少し濃さを増し、山の輪郭が山頂から海面まで見えている。

13:07 夕来展望所に到着。霞む利尻山を眺めながら、しばらく休憩する。地名のように、夕日が来れば、最高に眺めがいいだろう。

夕来からの利尻山(利尻富士)
夕来からの利尻山(利尻富士)

展望所に「稚内~利尻(利尻水道)遠泳達成記念」という碑が立っている。あとで調べると、1988年に稚内の水泳少年団が渡ったらしく、その記念碑のようだ。

確か、その100年ぐらい前の明治時代に、ヒグマが北海道本土から利尻島に泳いで渡ったはず。人間はヒグマよりかなり遅れをとったようだ。

ちなみに、その利尻に渡ったヒグマは、また泳いでいるところを利尻の漁師たちに見つかり、マサカリ(斧)で頭を殴りつけられて駆除されたとのこと。そのヒグマは体重300kg超だったらしい。

海を20kmも泳ぐヒグマも凄いが、その体重300kg超のヒグマを斧で撲殺した漁師(猟師?)たちのほうが、もっとスゴすぎてビビる。

夕来展望所出発。稚内まで26km。

坂を下ると、再び牧草地の中の平坦な道が続く。前方、稚内の方に山並みが見えてくる。

道道106号線②
道道106号線②

時計を見ると、まだ13時過ぎ。このままのペースで進むと、かなり早く稚内に着いてしまう。残り少ない道道106号線とサロベツ原野をのんびり走ろうと思う。

ということで、牧草ロールと利尻山を見えるところで、何度か立ち止まって写真を撮りつつ、風景を眺める。

「展望休憩所こうほねの家1km」

の看板。「こうほねの家」は、旅前にネットを調べて、その存在は知っていた。着いたら休憩しようと思う。

13:38「こうほねの家」に到着。駐車場に、車やバイク、自転車は1台もない。休憩所の中は、テーブルと椅子が並んでいて、非常にきれい。休憩で立ち寄るだけの施設にしてはかなり立派。ではあるが、今は誰もいない。とりあえず、トイレ休憩。

「こうほねの家」の海側には、浜勇知園地があり、1周できる遊歩道もついている。時間があるので、早速周ってみる。

海岸まで出てみると、波は穏やかだが、利尻山は相変わらず極薄のまま。遊歩道を歩いても、季節がもう終わったのか、花はほぼ咲いていない。園地の真ん中には大きな沼地があるので、この辺はまだ湿地なのか?と思ったりもする。

「こうほねの家」に戻り、屋上に上る。南側は光が反射して遠くまで見えないが、北側は海岸線がずっと続いているのが見える。一番遠くにうっすらと見えるのは、野寒布岬があるあたりだろうか?

こうほねの家から見る稚内方向の海岸線
こうほねの家から見る稚内方向の海岸線

13:53「こうほねの家」を出発。

右から山が近づいてくる。どうやら、果てしなく続いていたサロベツ原野も終わりようだ。ただ大きな沼があったりもするので、湿地帯ではあるようだ。

14:09 抜海の集落に入る。久しぶりの集落、稚咲内以来だろう。

集落の入口に、稚内の「主要観光案内」という看板があり、そこには「ノシャップ岬、水族館、タロ・ジロ記念碑、氷雪の門、宗谷岬」とある。全部行きたいところだ。

右へ大きくカーブし集落を抜けると、左には湿原と海、そしてその向こうに西稚内の海岸線が見えてくる。さらにその向こうの山の上には稚内公園の「開基百年記念塔」らしき白い塔も見える。

さらに走ると、稚内市街へ向かう急坂がだんだんハッキリ見えてくる。

14:40 道道254号線に分岐に到着。稚内へは、道道254号線を通り、野寒布岬を経由して行く予定だが、その前にここから道道106号線の急坂を少し上ったところにある「夕日が丘パーキング」へ行く。

というのも、そのパーキングはかなり眺めがいいという情報を旅前に仕入れていたからだ。急坂を振り向かずに上る。

14:45「夕日が丘パーキング」に到着。

西側は逆光が強すぎて、利尻島は光の中。カメラでも肉眼でも全く見えない。これまで走ってきた南側の海岸線だけ、なんとか見える。

夕日が丘パーキングからの眺め
夕日が丘パーキングからの眺め

昨日の「宮の台展望台」や今日ここまで走ってきた経験から、ある程度、こんなことだろうとは予想はしていた。とりあえず時間もあるし、自転車旅の記念というか「夕日が丘パーキング」行った軌跡にはなるだろうと思い来てみた。ここも午前中か夕暮れ時に来ないとダメなようだ。

無事カエルロード

坂を下りて道道254号線へ右折する。路肩が狭くなり、多少、交通量も出てきて走りづらくなる。

稚内の中心から随分離れている割に住宅街が続き、意外な感じがする。

そんな住宅街を走り始めるとすぐに、道路沿いにカエルの置物が並んでいるところが多いことに気づく。ところによっては、異様なほどの大量のカエルが並んでいたり、著作権に引っかかりそうな、よくみるとそうでもなさそうなキャラクターが並んでいたりもする。

「なんなんだ、あれは?」

と思うが、よくみると、そこには「無事カエル」や「ゆっくり走ろう」といった標示板が一緒に掲げられている。

道路の電柱などにも「無事カエルロード」と書いてある標示版もあったりする。

なので、多分、道道254号線沿線の自治会か町内会が、交通安全活動の一環としてやっているのだろうと思う。

カエルロードの置物いろいろ
カエルロードの置物いろいろ

が、今度は、

「なんでここだけ、そんなことをしているの?」

と疑問に思う。最初はわからなかったが、よく考えると、道道254号線はこの先に野寒布岬があるので、旅のバイクや車が多いだろうし、道路自体も少し狭いので、そうしているのではないかと思う。

点在する住宅街をしばらく走っていくと、右に「稚内温泉 童夢」の大きな建物。ここの湯船からは利尻山や夕日が見えて綺麗らしいが、ロシア人も多いらしい。寄るつもりはないのでパス。

そして、さらにしばらく走ると、右カーブの先に、「ノシャップ」という地名標示板を見つける。ついにやって来たかという感が強くなってくる。

右の小高い丘の上には、自衛隊のレーダーらしい球状の構造物が見える。

「あっ、ひょっとして、あのレーダー基地は、大韓航空機の撃墜(1983年に樺太沖でソ連機に撃墜された)を捕らえていたところじゃないか?」

と、まだその場所かどうかもわからないのに勝手に色めき立つ。あとで調べると、ここのレーダーで間違いなかった。

野寒布岬

野寒布岬への分岐で左折すると、灯台が目に入る。

15:19 野寒布岬のある「恵山泊漁港公園」に到着。

時間が存分にあるので、まずは「ノシャップ寒流水族館」に入ることにする。入館料400円也。

中に入ると、アザラシのいる屋外のプールへ。ほとんどのアザラシは泳いでいるが、その中に水中で直立不動状態のアザラシが一頭いて、非常に気になる。そのアザラシの気持ちはわからない。

直立不動のアザラシ
直立不動のアザラシ

続いて屋内に入ると、水槽にはクリオネとかイトウ、フウセンウオなど珍しい魚が泳いでいる一方で、タラバガニとかニシンとか食卓に並ぶ魚が多くてなんか笑える。

再度、外に出ると、今度はペンギンのいるプール。ペンギンだけかと思ったら、アザラシも一緒のプールにいる。争い事はなさそうに見える。

ただ、ペンギンたちだけ、プールから上って柵のほうに集まっている。柵の間から手を入れれば余裕で触れるが、餌と間違えて噛みつかれそうなので、写真だけ撮らせてもらう。

直立不動のペンギン
直立不動のペンギン

15分ほどで見学終了。来館者は少なかった。

腹が減ったので何か食おうと思う。さすがに夕方なのでご飯ものは避けよう。近くの店(みなとや?)に入り「うにラーメン」を食う。

ラーメンを食い終わっても、まだまだ時間があるので「ノシャップ寒流水族館」の隣りにある「青少年科学館」(2014年から「ノシャップ寒流水族館」と併設)に行く。入館料150円也。

いろいろ実験展示などあるが、この辺はザッとみて終了。ただ、南極関連の展示には、興味が湧いたので、じっくりみる。

南極関連の展示は本館だけでは収まらず、外に別館があるようだ。で、外に出ると、農家なんかでよく見かける半円筒型のプレハブの建物が「南極越冬隊資料展示コーナー」になっている。

その中は、昭和基地で使用していた居住棟や雪上車があったり、南極越冬隊の一員でもあるタロに関する新聞記事や写真などが展示されている。別館というより、倉庫を展示コーナーにしたような感じだ。

昭和基地で使用していた雪上車
昭和基地で使用していた雪上車

展示物によると、タロもジロも生まれ故郷の稚内には眠ってはいないらしい。タロは札幌の博物館、ジロは東京の博物館で剥製になっているとのこと。なんとも…。

「青少年科学館」の見学はこれに終了。来館者はほぼ皆無だった。

見学できる施設はもうないので、いよいよ野寒布岬に行く。その途中にある「ノシャップ寒流水族館」の塀の壁に、

「ノシャップ岬 本日の日の入りはPM7時4分です」

と書いてある。

稚内は緯度が高いので、夏は日が長いことは知っていたが、それにしてもまだ日没までかなり時間がある。まだ、いろいろ行動できそうだが、もう行くところがあまりない。

あとで気付いたが、ここに日の入り時間が掲示されているのは、野寒布岬が夕日の絶景スポットだからだろう。

野寒布岬周辺を散策する。天気がいいにもかかわらず、ここにも人はあまりいない。

稚内灯台とイルカのモニュメント
稚内灯台とイルカのモニュメント

岬からの景色も、逆光で西の空はほとんど光の中で真っ白。と思っていたら、南西方向の光の中にうっすらと利尻の島影(山影)が見える。

これはと思い、「ノシャップ岬」と書かれた標示板と一緒に、光の中にある利尻山の影を写真に収める。

野寒布岬
野寒布岬

自衛隊のレーダー基地がある南の丘は、クッキリよく見える。

そろそろすることもなくなってきた。「恵山泊漁港公園」の前にある土産物店を物色するが、特に欲しいものはないのでトイレだけ借りて退散。

稚内の市街地に向かうことにする。

道道254号線に復帰し、狭くて走りづらい道をズンズン走っていくと、「稚内公園→」の案内標識が見つける。

「よし、次は稚内公園だー」

と思い、右折する。

稚内公園

いっそう狭くなった民家の横の坂を上る。「稚内公園」は、山のほうだろうと思っていたので、上り坂は想定内。

が、左にカーブすると、勾配が一段とアップ。。しかも、どんどん勾配が増していくような感じがする。そしてヘアピンカーブなんか出てきて、勾配がもう15%ぐらいはあるだろうというトンデモない急坂。すぐに汗だくになる。

道は狭いし、路面に滑り止めの凸凹があったり、後ろから上ってくる車もそれなりにいたりして、だんだんうんざりしてくる。それでも、

「絶対に自転車を押して上らない」

と意味のないミョーな意地を張り、何度か休憩しながら必死コイて上る。膝がおかしくなりそう。坂の途中にある小さな公園からは、稚内市街や港、北防波堤ドームがよく見える。

稚内の街
稚内の街

17:00「稚内公園」に到着。抜群に眺めがいい。良すぎる。

いろいろと碑やモニュメントがあるので順番に見て周る。「教學之碑」、「昭和天皇行幸啓記念碑」、「氷雪の門」、そして「九人の乙女の碑」。

やはり「九人の乙女の碑」には心が揺さぶられる。樺太・真岡郵便局で起こったことは、だいたい知っていたが、改めて実際に起こったことを詳しく知り、そしてこの碑に刻まれている最期の言葉を読むと、胸が締め付けられる。

ほんの少し前にあったこと。改めて胸に刻みつける。今日は、樺太は見えない。

九人の乙女の碑
九人の乙女の碑

少し戻って、「樺太犬供養塔」、「測量の碑」、「南極観測樺太犬訓練記念碑」を見て行く。

「測量の碑」は、普通の三角点を碑にしたような感じ。碑になっているのは、多分、ここが本土最北端の地だからだろう。

そして、その向こうに犬の像が見えるので、てっきりタロかジロの記念像かと思ったが、「南極観測樺太犬訓練記念碑」というもの。

稚内公園が南極越冬隊に参加した樺太犬の訓練場だったとは知らなかった。

南極観測樺太犬訓練記念碑
南極観測樺太犬訓練記念碑

これで見学するところは終了。

「氷雪の門」の方に戻り、眼下の海を眺める。利尻か礼文からやってきたフェリーが見える。そして稚内市街を見下ろすと、真前に北防波堤ドームが見える。

「よし、次はあそこに行こう」

稚内公園を出発して急坂を慎重に下りる。

北防波堤ドーム

17:34 「北防波堤ドーム」に到着。

「いやー、スゴイね」

初めて「北防波堤ドーム」を見た率直な感想だ。

古代のギリシャ神殿のような柱が何十本も並んでいて壮観だし、こんな巨大な建築物を昭和初期に造ったなんて、ちょっとビックリする。先人技術者たちはスゴイね。

北防波堤ドームの入口
北防波堤ドームの入口

あとで調べると、「北防波堤ドーム」は全長427m、高さ13.6m、奥行き8m、柱は6m間隔で72本もあるという。

戦前、戦中は、今の稚内駅からドームの横まで線路が延びていて、桟橋駅があり、駅を出るとすぐ樺太への連絡船乗り場があったらしい。なんか、当時をちょっと想像してしまう。

そんな、「北防波堤ドーム」の今はライダー、チャリダーの野宿?場所として有名。だと思っていたが、今日はバイク1台とその横にテント1張りだけ。

北防波堤ドームの中
北防波堤ドームの中

ドームの北端まで行くと、フェリーがちょうど港に入ってくる。稚内公園から見えたフェリーだろう。

「北防波堤ドーム」の横には、蒸気機関車C55の車輪や「稚泊(稚内-大泊(樺太))航路記念碑」があり、ここまで線路が延びていて、連絡船乗り場だったことがわかる。

日本最北端・稚内駅

「北防波堤ドーム」を出発、稚内駅へ向かう。

稚内駅は、最北端の駅として有名だが、目的地は駅舎ではなく、テレビや写真なんかでよくみる「最北端の線路」、いわゆる車止めの部分だ。

車止めの場所を探す。宗谷本線の線路は南から来ているので、駅の北側だろう。

駅の裏手にある道に来ると、駐車場の間に、鉄パイプで区切られた変な通路がある。もしやと思い行ってみると、その先にそれらしい表示板を見つける。

17:48 最北端の線路に到着。自分が来る前に観光客が数人いたが、写真を撮ってすぐに帰って行った。そして自分も、お約束のように、最北端の線路の前にMR 4Fを止めて写真に収める。

最北端の線路と最北端の駅
最北端の線路と最北端の駅

さて、だいたいこれで今日の予定は終わり。まだ日没まで1時間ほどあるので、明朝に行くフェリー乗り場を確認しに行くことにする。

17:56 稚内フェリーターミナルに到着。新しくて、かなり立派な建物。

場所は確認できたので、その先の岸壁まで行ってみる。

岸壁の正面には北防波堤ドームが見える。北防波堤ドームの長さを感じる。

これにて今日のツーリングは終了。宿に向かうことにする。

その途中、稚内駅の前を通る。駅舎は昔ながらのドッカリとした直方体型の外観で、自転車旅の出発地だった留萌駅に似ている。というか、昔の主要駅はこんな感じの駅舎が多く、札幌駅も昔はこんな感じだったと思う。

プチホテル ビジネスジョイ

18:15過ぎに宿に到着。今日のお宿は「プチホテル ビジネスジョイ」(その後、閉店)。普通のビジネスホテルで、1泊2食シングルで9,950円也。

フロントに行くと先客がいる。若くてガタイのいい白人が3人(男2、女1)。多分、ロシア人だろう。少し時間がかかっているので予約なしの飛び入りのようだ。

しかし、どういう人たちだろう。観光客には見えない。漁師、水産関連、はたまた最近活発な中古車買取業者だろうか?

自分の番になり、いろいろ説明を受ける。晩飯の場所や、夜食のカップ麺が無料なこと、朝食は朝5時半から食べれること、コインランドリーなどなど。

フロントの横にラーメン屋の入口風に見立てたところがあり、そこの棚に夜食のカップ麺が並べられいる。夜中の1時に閉店するので、それまでに自由に持っていけるとのこと。

部屋の鍵と晩飯のチケットなどをもらい、部屋に入って、まずシャワーを浴びる。洗濯もとっととやっておく。

そして晩飯を食いに行く。晩飯はホテルではなく、近くにある日本料理と郷土料理の店「車屋源氏」。宿を予約するときに、食事のコースも一緒に予約していた。そのメニューは「稚内名物たこしゃぶ御前(磯物三点盛・たこしゃぶ鍋・イクラ丼・香物・吸物)」だ。

飯を食う前に、追加でビール&つまみを注文する。結構、腹一杯になって満足。

20:50 店を出る。ほろ酔い気分で、夜の北防波堤ドームに行ってみる。夕方来た時と同じところに、バイク1台とその横にテントがあるだけ。最近は、ここに野宿する人はあまりいないのかもしれない。

適当に駅のほうに向かって歩く。二次会用の酒を買おうと思うが、一番近くのコンビニは、駅から少し先にあるセイコーマート。

そこで買い物をしているときにふと気づく。明日明後日は礼文、利尻にいるので、使えるのは現金だけになるだろう。現金は十分持っているが、念のため、ここでは現金を使わずにクレジットカードで支払うことにする。コンビニの支払いでクレジットカードを使うのはこれが初めてだ。

部屋に戻り、二次会開始。いい感じに酔っ払って、最初はいらないかと思っていたカップ麺をせっかくなのでもらいに行く。わかめラーメンにする。で結局、締めにわかめラーメンを食う。

明日は朝イチのフェリーで礼文に渡るので、寝坊しないよう目覚ましをセットして寝る。

走行時間:5h21m06s 走行距離:93.13km
平均速度:17.4km/h 最高速度:45.0km/h