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'16 強風の隠岐と出雲国② 境港〜中ノ島

2016年 自転車旅 中国

2日目 2016年5月1日(日)       -

5:00 起床。すぐに朝食を食べ、荷造りをしながら、トイレ待ちする。自転車旅では、朝出発前に必ずトイレに行くようにしている。そうしないとエライことになる日もある。

今日は、島前の知夫里島と中ノ島に行く予定だが、その前に美保関に寄る。

昨日考えた通り、七類のフェリーの出航時間は9:30なので、余裕を持って3時間前の6:30に出発することにする。予報通り今日も天気がいい。

6:20 宿を出て、自転車のリアキャリアに荷物をつけていると、同宿のバイクツーリングの方に声をかけられる。

ライダー:「どこから来たんですか?」

自分    :「◯◯です」

ライダー:「えっ、◯◯からここ(境港)まで自転車で?」

自分    :「いえいえ、◯◯から松江までは電車で来て、自転車は松江からです」

ライダー:「そうですか。今日はどこまで行くんですか?」

自分    :「隠岐まで」

と、ここまでは自転車旅をしていると、よく聞かれる内容だ。

だが、その後、

ライダー:「おき???」

ライダーの方は「隠岐」がどこのことだかわからないようだ。そこで、

自分    :「隠岐の島」

ライダー:「あ〜、隠岐の島ねぇ〜」

と、わかってもらえる。

ここ境港は隠岐の島行きのフェリーが出ているので、知らない事はないだろうと思っていたが、どうやらライダーの方は隠岐に行くつもりは全くないらしく、それで最初は思い浮かばなかったかもしれない。

6:30 ライダーに見送れながら宿を出発。

水木しげるロード」は完全にスルーして、まずはお金をおろすためコンビニに向かう。「ゲゲゲの鬼太郎」は数えるほどしか見た事がないのでほとんど興味はない。

隠岐の島にはあまりコンビニがなさそうなので、お金をおろすとなると郵便局になるだろう。最近はGWとはいえ、だいたいどこでもお金はおろせると思えるが、念のため今のうちに必要な分だけおろしておく。

境水道大橋に向かうが、また道を少し間違える。

境水道大橋には歩道はなく、路肩もほとんどないが、昨日の予想通り、早朝のため交通量が皆無なので、安心して走れる。ただ、交通量が多くなると走りづらいだろう。

それから、この橋は境港に出入りする大型船が通れるようにするためか、かなり高くしてある。今日も西風がやや強いため、煽られないように気をつけながら走行する。

境水道大橋を渡りきり、再び島根県に入る。しばらく下ったあと国道431号線から県道2号線に入り、美保関に向かう。

県道2号線も早朝なので交通量はほぼ皆無だ。

美保関までの行きは、西からの追い風にのって快適に走れるが、戻りは同じ道を引き返すことになるので向かい風で時間がかかるかもしれない。美保関の目標到着時間は7:20だが、それより早めに着きたいところと思いながら走る。

県道2号線に入るとすぐに右手前方の境水道に大型客船が見えてくる。以前、テレビで中国からの観光客が大型客船で境港に来て、爆買いするところを見たことがある。多分それかなぁと思いながら走る。

さらに走ると、美保湾の向こうに今日も大山が見えてくる。

美保関

その後、美保関神社、小さな漁港、旅館などがあるちょっとした街を通過する。ここが美保関の街のようだ。

街を過ぎると上り坂が始まるが、勾配は5%強ぐらいでキツくはない。岬や灯台は高いところにあることが多いので、その手前はだいたい上り坂だ。

7:20 美保関灯台の駐車場に到着。朝早いこともあり、観光客は3,4組ほどで、もちろん車やバイクで来ている。

美保関といえば、学生時代好きだった大関「北天祐」の所属部屋が「美保関部屋」だったと記憶していたが、あとで調べると「三保ヶ関部屋」の勘違いだった。

美保関灯台をみてから、展望所に行ってみる。隠岐の島は全く見えないが、日本海は綺麗だ。ここにある案内板で「美保関事件」のことを初めて知る。

「そんな事が、この近くであったとは知らなかった…」

美保関灯台
美保関灯台

美保関灯台から望む日本海
美保関灯台から望む日本海

駐車場まで戻ると、ここからも美保湾越しに大山がよく見えて綺麗だ。

美保湾越しの大山
美保湾越しの大山

7:35 美保関を出発、元来た道を戻る。美保関の街までは下りなので問題ないが、その後は向かい風の中をなんとか漕いで行く。

国道431号線に合流する手前から、小さな造船所の建物が道路に迫っていて、一段と道の狭さを感じる。

国道431号線に入ってから少し走り、七類港へ向かう国道485号線へ右折する。この先には七類トンネルがあり、予想通り、上り坂が始まる。

海岸線を除いて、トンネルは山越えするところにあるので、トンネルの前は上り坂、トンネルの後は下り坂とだいたい相場は決まっている。

ただ、ピークの地点は、トンネルの入口だったり、出口だったり、トンネルの中だったりといろいろある。ここはトンネルの中がピークで、上りの勾配は前半は緩く、後半がキツめとこれもよくあるパターンだ。

トンネルは古く、路肩は比較的広いが、小石や砂が多い。交通量はまだ朝なのでさほどでもないが、フェリーに載るためか何台かトラックに抜かれる。リアライトを点灯させて路面や後方の大型車に注意しながら走る。

トンネルを出て急坂を下り、右折するとフェリーが見えてくる。

七類港

8:30 七類港フェリーターミナルに到着。予定通りフェリー出港時刻の1時間前に着いた。まずはターミナルの中へ切符を買いに行くが、連休のため人が多い。

乗船名簿を書いて、知夫里島・来居港までの切符を買う。2等で2,920円也。自転車は折り畳んで輪行バッグに入れるので料金はかからない。

自転車は、折り畳まなくてもフェリーには載せれるが、別途1,290円かかり、かなりいい値段がする。運賃の半分近くもするので輪行したほうが得策だろう。

切符を買った後、外に出て自転車を折り畳む。そんな時にも松江から来たと思われるバスが到着して、さらに人が増える。

輪行バッグとリュックを担いで再度ターミナルに入り、エスカレータで乗船口へ向かう。2階に上がったところで一旦輪行バックをおいて、乗船口を確認しに行く。すると、乗船口にはかなり人が並んでいるので、すぐに輪行バッグを取りに戻り、列に並ぶ。

時刻はまだ9時前。並んでいるところから、乗船するフェリーが見えるが、その後ろにもう一隻同じようなフェリーが見える。

自分が乗船するのは、9:30発の「フェリーくにが」で、まず島前に行き、その後、島後に周って、七類に戻る航路。もう一隻は、9:00発の「フェリーおき」で、航路は「フェリーくにが」の逆回りだ。

フェリーくにが
フェリーくにが

2隻のフェリーが同じような時間に出航するため、ターミナルは混んでいるようだ。

ちなみに、隠岐の島への航路は「隠岐汽船」が運行しているが、フェリー以外に高速船もある。ただし、自転車は当然載せれないし、折り畳んで輪行バッグに入れても「持ち込み不可」のようだ。

9:00に「フェリーおき」が出航していき、その後こちらも輪行バッグとリュックを担いで「フェリーくにが」の船内に入る。

席は2等の雑魚寝席なので、すぐにスペースを確保したいところだが、その前に輪行バッグを置きに行く。フェリーでの置き場所はだいたい決まっていて、今回もいつも通り、階段横の邪魔にならないスペースに置き、倒れないよう肩掛けベルトを階段手すりの支柱に巻き付けて固定しておく。

2等席に行き、なんとか横になれるスペースを確保する。リュックをおいて場所をキープし、デッキに出てみる。

今回のフェリーは大きさでいうと中型クラスだろうか。同じような大きさの船は、デッキや通路のある場所も似ている。

この船の1Fからは、乗下船口である中央の左右両舷と、後部から外に出られる。船首には行けず、後方の両舷か船尾のデッキにしか出られない。

船尾1Fのデッキには椅子が並んでいて、喫煙所がある。そこから階段で、2Fのデッキに上がれるようになっている。

9:30 七類港出航。デッキの2Fにあがり、しばらく七類湾を眺めたり、写真を撮る。湾を出てGPSでフェリーの進路や速度を確認してみる。速度は約30km/hで、これまでの経験でもフェリーの速度はだいたいこれくらいだ。

七類港フェリーターミナルとメテオプラザ
七類港フェリーターミナルとメテオプラザ

しばらくして船内に戻り、音楽を聞きながら、知夫里島のツーリングコースを見たりしながら過ごす。

知夫里島が近くになり、再度デッキに上がり、島の写真を撮る。

島前(島名は?)
島前(島名は?)

知夫里島

11:30 定刻通り、知夫里島・来居港に到着。下りる人はさほどいない。この島は、フェリーが寄港する島の中で一番小さく、人口も少ないらしい。

こじんまりした待合所前のベンチで自転車を組み立てていると、少し離れたところに自転車の方がいる。18か20インチぐらいの小径車でどうやら同じフェリーに乗ってきた旅人のようだ。

フェリーの中では自分以外の輪行バッグを見なかったので、その人は自転車を折畳まずに載せてきたのだろう。

知夫里島・来居港
知夫里島・来居港

自転車を組み立てた後、「中ノ島」行きの船の時間を確認しに待合所へいく。調べていたとおりの時間で、知夫里島を周った後は15:57発の「どうぜん」か16:28発の「いそかぜ」に乗ることにしよう。

16:28に遅れたとしてもその後にまだ4本もあり、しかも最終はなんと22:05だ。バスのような感覚なのだろうか。

待合所の中にある案内所で知夫里島のパンフレットをいただき、そろそろ出発しようと外に出る。小径車の人は既に出発したようで姿はない。

もらったパンフレットの地図を眺めていると、西側の道路がどこまで舗装されているか気になったので、案内所に聞きに行く。

すると、

「パンフレットに書いてある道路はすべて舗装されていますよ」

と言われ、一安心する。

自転車のタイヤ幅は15mmあり、スリックでもないので、少々のダートでも大丈夫だが、パンクのリスクはできるだけ避けたい。

11:45 来居港を出発。海沿いを北東方向にすすみ、民家の間の激坂を上る。こういう激坂は離島の港の出入口によくある。

県道322号線に出て、さらに坂道を上ると、最初の目的地である「河井の地蔵さんの水」はすぐそこにあった。柄杓で水を一杯飲み、ペットボトルの水道水を「河井の地蔵さんの水」に入れ替える。

河井の地蔵さんの水
河井の地蔵さんの水

「河井の地蔵さんの水」を出発して、知夫村の中心部がある海岸線まで一気に下ると、海沿いに広くて新しい眺めのいい道がある。県道から外れ、この道でのんびり海を見ながら、次の目的地の島津島に向かうことにする。

しばらく走ると、隣りの県道322号線が湾に沿って大きく左カーブしているのが見える。ツーリングマップルもそうなっていて、その先に島津島があるので、県道322号線に戻ることにする。

県道に戻り、湾沿いのやや上りカーブを走っていると、右手の下に海にかかる橋が見える。

「あの橋は?」

と思ってみていると、この先で県道と合流しているではないか。

どうやらさっきまで走っていた海沿いの新しい道は、あの橋に続いていたようで、あのまま走っていればよかったのだ。あっちの道のほうが断然眺めもがいい。

持っているツーリングマップルが「2008年版」と古いため、海沿いの新しい道が載っておらず、それを知らずに県道に戻ってしまった。小さい島なので、道路が2本並行して走っているとも思わなかった。

この後はパンフレットの地図も見たほうが良さそうだ。

新しい道と合流した後、橋からの景色を眺めたいため、橋の中央まで戻ってみる。橋の名は「汐見橋」、いい眺めだ。島津島に向かう。

海にかかる汐見橋からの眺め
海にかかる汐見橋からの眺め

元の県道322号線に戻ると上り坂が始まるが、勾配もそれほどキツくなく、距離が短いので問題なし。

上りきると下りの左カーブに入り、島津島と島津島にかかる橋が見えてくる。海岸線まで一気に下り、T字路に出て右折する。小さな公園があり、遊歩道のような道を進む。

島津島
島津島

お松橋
お松橋

12:15 島津島へ渡る橋、お松橋に到着。お松橋の中央部は太鼓橋のような急坂になっている。自転車で行けなくはないが、橋の袂には「車輛通行不可」の看板もあるので、直前に通り過ぎた公園に自転車をおいて、ここからはゆっくり景色を見ながら歩いて行くことにする。

島津島

お松橋を渡り、透明度の高い海を見ながら遊歩道を進むと、遊歩道の土の部分に自転車のタイヤ痕があることに気づく。しばらくして、向こうから自転車が1台やってくる。

お松橋からの眺め
お松橋からの眺め

見覚えのある自転車だ。どうやら来居港で見かけた人のようだ。

「ここは車輛通行不可で、自転車も車輛なのだが…」

とは思うものの、

「まぁいいけど…」

とせっかくの楽しい旅なので、気にしないでおく。

「ツーリング派というより、ポタリング派というべき体型的だなぁ」

と思いつつ、挨拶を交わすことなく擦れ違う。

さらに遊歩道を進むと、やがてトイレのような建物が見えてきて、遊歩道はこれで終わりのような感じだ。自転車のタイヤ痕もここで引き返している。

ただ、この先にBBQハウスのような施設や、更にその先に神社の鳥居が見える。

「行けるところまで行ってみよう」

神社に向かって進んでいくと、BBQハウスの前あたりだけ、石ころだらけで歩きにくいが、それ以外は砂場や岩場を使った遊歩道のようになっている。

神社までたどり着く手前で左手横の崖の上に2人の人影が見える。ツーリングマップルによると、この付近にキャンプ場があるようなので、そこに行く人だろう。BBQハウスもキャンプ場の一部のようだ。それにしてもあんなところに本当にキャンプ場があるのだろうかと思う。

神社までたどり着く。その名は「渡津神社」。神社の手前左手に碑のようなものがあったが、特に関心なく、海の写真を撮って通り過ぎる。

渡津神社
渡津神社

神社の先に浮き桟橋のようなものがあったので乗ってみる。浮き桟橋が陸から離れそうな感じがしてきたので、すぐに陸地に引き返す。

キャンプ場の施設に人影が見え、声も聞こえくる。さっき崖の上を歩いていた人だろう。

しばらくして元来た遊歩道をお松橋まで引き返す。その途中で2組の方とすれ違い、挨拶を交わす。

また、対岸の知夫里島の県道を、あの小径車が村の中心部に向かって上っている姿も小さく見える。

お松橋を渡り、自転車を止めた公園に戻る。ここで、これからの予定を地図をみながら考える。「高平山」へ行く事も少し考えたが、時間的に無理なのでパス。海岸線沿いをいけるところまで南下して、そのあと引き返して、予定通り「赤壁 -RedCliff-」へ向かうことにする。

12:45 お松橋を出発、海岸線沿いを南下する。5分ほど走ると小さな漁港があり、漁師さんと思われる2人が話しこんでいる。漁港を過ぎるとすぐに行き止まり、引き返して島の西端にある赤壁に向かう。

知夫里島・西部

13:05 知夫村の中心部に戻り、ここから島の西側へまわる。しばらくアップダウンや小さな集落を通り過ぎる。この辺から離島特有の10%近い急勾配の道が現れる。海や海岸線の景色がいいため、写真を撮って休憩しながら進む。

その途中で、頭が派手な鳥も見かけるようになる。あとで調べると、オスの「キジ」のようだ。

仁夫の集落を過ぎると、民家はなくなり、海は見えるが完全な山岳コースになる。

知夫里島南部の海岸線
知夫里島南部の海岸線

しばらく走ると、道路に「テキサスゲート」が出てくる。ここから放牧場に入るようだが、全然平らなところがなく、急斜面しかない放牧場だ。

「テキサスゲート」は、何箇所かあるので、そこではタイヤが溝に嵌らないよう自転車を押して渡る。

ちなみに「テキサスゲート」とは、牛や馬がここから出て行かないよう道路上に設置してあるスリット状の溝のことだ。牛や馬は、足が溝に嵌ってしまうため、ここを歩けないようだ。

知夫里島西部の放牧地へ
知夫里島西部の放牧地へ

アップダウンの激しい「糞」だらけの1.5車線道路を進む。乾燥した糞は「土」と思って気にせず走る。気にすると前に進めない。ただし、大きい「土」の塊と、湿った「土」だけは避けて通る。

また、「土」の落とし主である牛が、何度か道路のすぐ近くや道路上にいたりすることもある。

落とし主はなんせデカいので、そこは刺激しないようゆっくり走ったり、自転車から下りて歩いて通り過ぎる。

通りすぎる時、一応「すみません」と軽く頭を下げると、避けてくれる優しい牛たちだった。

牛というと、北海道で過去2回、柵の中から群れに追いかけられた怖い記憶があるので、ホッと一安心する。ありがとうございます。

赤壁

13:50 赤壁の入口に到着。車数台が止められる駐車スペースには、先客の車が2台止まっていて、タクシーの運転手は寝ている。スペースの傍に自転車を止めておく。

「マムシ注意」の看板にビビりながらも、展望所に続く遊歩道を上って行く。その途中、展望所らしいところで、女性二人組が写真を撮っているので、少しゆっくり歩く。あちらもこちらに気づき、しばらくすると引き返してくる。

展望所は、柵もない断崖の上にあり、目の前に赤壁が見える。赤壁はその名の通り、断崖絶壁の崖が赤くなっており、なかなかの迫力で写真1枚に収まりきれない大きさだ。赤いのは、鉄分が酸化して赤くなったためだろうか。よくわからない。

写真を撮り、駐車スペースに戻る。車はもういない。次は赤ハゲ山を目指す。「赤ハゲ」だけにそこも赤いのだろうか?

赤壁
赤壁

14:00 赤壁を出発。赤ハゲ山は、知夫里島最高峰で標高は324.5m。なので、完全な上りの道となる。しかもこれまでより勾配がキツく、10%くらいはあるだろう。

そんな上り道にも、あいかわらず牛が普通にたむろしているが、だんだん慣れてきたので普通に通過する。

下を見ると、これまで上ってきた道がずっと見えるので景色はよく、かなり上ってきたことを実感する。

急斜面の放牧場と九十九折の道
急斜面の放牧場と九十九折の道

ところが、そんな急坂をゆっくり漕ぎながら進んでいると、なぜだがだんだんとペダルが漕げなくなっていく感覚がしてくる。久しぶりの長めの上り坂を走っているとはいえ、

「なんでこんなに上れないの?」

と最初は少し焦り、その後は

「歳のせいかなぁ?」

などと思うようになってくる。

しかし、体力的なキツさや疲れとは少し違う感覚がする。

そのとき、ふと思いつく。

「これが、あの『ハンガーノック』というヤツではないか?」

食事は朝ご飯のみで、いつものように昼食はとっていない。

ただ、今回に限って家にあったお菓子をリュックの中に入れて持ってきていた。それを思い出し、道路脇の退避スペースに自転車を止めて、お菓子を食べる。

食べた量は少ないし、食べてもすぐには効いてこないので、しばらく休憩する。

休憩後、出発すると体力は回復しているので少しホッとする。

赤ハゲ山山頂への分岐の手前で、女性の方1人が前から歩いて下ってくる。後にも先にも止まっている車は見なかったので、港から歩いて島を周っているのだろうか?

昼は過ぎていて、ここらへんは民家も皆無ではあるが、島に泊まるなら、時間的には十分島の中心部にたどり着けるだろう。

さて、ペダルはかなり漕げるようになったが、栄養は全然足りていないと思う。昼食はだいたいいつも採らないが、糖分補給のため、炭酸のジュースを飲むことがよくある。

赤ハゲ山の頂上には、結構大きな建物がみえるので、自販機ぐらいはあるだろうと思いながら、頂上に向かって上る。

赤ハゲ山

14:50 赤ハゲ山に到着、特に赤いところは見当たらない。到着前に車1台に抜かれるが、乗っていた方は頂上にある地図を見たぐらいで、すぐに帰っていく。

昼過ぎぐらいまで晴れていた天気も、頂上についた時は完全な曇天で、残念ながら頂上からの景色はイマイチだ。天気が良ければ、かなりいい景色だろう。

赤ハゲ山山頂から望む西ノ島
赤ハゲ山山頂から望む西ノ島

頂上の建物から少し離れた草むらに、テントがひとつ張っているが、人の気配はない。周辺に、車やバイク、自分以外の自転車もないので、多分出かけているのだろう。

一瞬、先ほど擦れ違った女性のテントかと思ったが、こんなところで女性一人ではキャンプしないだろう思い直す。

トイレを済ませた後、建物の中を覗くと、ベンチが並んでいて、自販機とゴミ箱もあるので、炭酸のジュースを飲みながら、しばらく休憩する。

いつも自販機で飲み物を買わ時は、横にゴミ箱のあるところで買うようにしている。そうしないと、飲んだ後の空き缶やペットボトルをゴミ箱のあるところまで持って行くことになるからだ。

15:05 赤ハゲ山を出発。港までずっと下りなので、スピードに注意して進む。空はまだ晴れておらず曇天。

下っていると、目前にまで西ノ島が少しずつ近づいてくるので、自転車を止めて何枚か写真を撮る。

古海(うるみ)の集落を過ぎて、しばらく走りトンネルに入る。そういえば、島に到着後、来居港から急坂を上って県道322号線に出たところは、トンネルの出入口だったことを思い出す。

なのでトンネルを出たところで左折する。

それともう一つ、船で来居港に到着する前、船から港を見ていたとき、港から急なループ道を車が上っていくのを見たのだが、

「あの道はどこだったのだろう?」

と思う。

港に着いてから周りを調べると、待合所のすぐ背後というか真上に大きなループ道があるのがわかる。島に下りた時は、これに全然気づいていなかった。

そして、このループ道はトンネルの西側出入口付近で県道322号線につながっていることもわかった。

そういえば、さっきトンネルを通る前、入口の前にあった案内標識では左に来居港と書いてあった。

あの時は、「トンネルの先で左折」と思ってトンネルに突入したが、トンネルの前で左折していればループ道に出たようだ。

来居港

15:40 来居港に到着。知夫里島内の交通量はほぼ皆無だった。

この時間だと15:57の「フェリーどうぜん」に乗れるが、ここで5月4日の宿を決めて予約しようと思っていたので、16:28の「いそかぜ」に乗る事にする。

ちなみに「フェリーどうぜん」と「いそかぜ」は、本土の境港や七類と結ぶフェリーとは異なり、島前の知夫里島・来居港、中ノ島・菱浦港、西ノ島・別府港の間を結ぶ船で、運賃はどこで乗り降りしても300円だ(車輛は別)。

5月4日の宿のほうは、島後・西郷に泊まる予定なので、あらかじめ候補の宿をピックアップしておいた。第1候補から順番に電話をかけていく。

数件目で空きのある宿は見つかるが、料金が高めなので一旦保留する。他の宿にも電話を入れるが、どこも空きがないか料金がさっきの宿より高い。

結果、保留していた宿に再度電話を入れ予約する。いつものことだが、GWの5月3日と5月4日は取りづらく、取れたとしても高くつく。

時間がまだあるので、大きくない待合所に入り、このあとの予定を考える。

今日はこれから向かう中ノ島に泊まるが、到着は16:46だ。日没まで1時間程あるので、そのまま宿に向かうのではなく、三郎岩や隠岐神社あたりを周ることにしよう。

ハンガーノック状態は解消されていないはずなので、待合所の売店に簡単な食べ物はないか物色するが、これという物はなく、諦める。

そんな事をしていると、15:57発の「フェリーどうぜん」が到着する。車も積める小さいフェリーで、客を乗せるとすぐに出航し、待合室は自分一人だけとなる。

フェリーどうぜん
フェリーどうぜん

売店も16時頃には閉まる。待合所の中の張紙を色々とみていると船の時刻とともに乗場を示す張り紙もある。

出発時刻はよくわかっているし、乗場もさっき出航していった「フェリーどうぜん」と同じ場所だと思っていた。ところが「いそかぜ」の乗場は「フェリーどうぜん」と同じ場所ではないことがわかる。

「フェリーどうぜん」の乗場は、待合所の少し左手(西側)になるが、「いそかぜ」の乗場は、待合所から100mちょっと離れた右手(東側)のほうだ。

待合所を出ると「いそかぜ」らしい船がちょうど港に入ってきたので、急いで輪行バッグとリュックを担ぎ、乗場に向かう。

そこには、小さいバス停のような待合所があり、3人ほどの乗客が船を待っている。

しばらくして「いそかぜ」が接岸する。「フェリーどうぜん」の半分もない小さな船で、乗れるのは多くても30人ぐらいだろう。来居港が始発なので、乗客はまだいない。

当然、車は積めないが、自転車も折り畳まない状態で載せられるのかわからない。事前に確認した方がいいだろう。

「いそかぜ」に乗り込み、後方の座席の後ろに輪行バッグを置き、肩掛けベルトを手すりに巻き付けておく。前方の座席に座る。

16:28 定刻通り、知夫里島・来居港を出航。

いそかぜ
いそかぜ

中ノ島

16:46 中ノ島・菱浦港に到着。船を下りるとすぐに、屋根つきで大きなウッドテーブルとイスのある待合場所がある。ここで自転車を組み立てる。

組み立て後、ネットで宿とその近くにある買い物ができそうなお店の場所を調べる。そして確認のため、まずはそこに向かう。

フェリー乗場から島を周回する県道317号線を進むと、役場の近くに数軒のお店があり、役場の少し先に宿を確認する。が、宿の入口がよくわからない。

とりあえず宿の場所を確認できたので、次は「三郎岩」が見えそうなところに向かう。「三郎岩」は、中ノ島の観光名所のようだが、パンフレットには船からの写真しか載っていない。

地図で場所を確認すると、中ノ島の北側にある角山近くの海岸から500mほどの沖にあるようなので、そちらにほうに行ってみる。

県道317号線を少し戻り、途中で諏訪湾沿いの道に入り北上する。諏訪湾沿いの道は片側1車線の綺麗な道だ。

橋を越えて、角山を西側から周りこむように上っていくと、木や草むらの間から海が見えてくる。しばらく海のほうを見ながらゆっくり上る。

三郎岩

17:25 草むらが途切れて、「三郎岩」らしきものを発見。近くのガードレールに自転車を止め、見えた場所まで戻る。その途中、草むらの中に人が踏みつけて草がはがれたような場所が目に止まる。

そこに立つと、正面に「三郎岩」らしいものが見え、眺めたり写真を撮るにはちょうどいい場所だ。多分、たくさんの人がここに立ったのだろうと想像がつく。

改めて「三郎岩」をみると、パンフレットの写真と形がかなり違う。パンフレットでは大中小の細長い3本の岩に見えるが、ここからは全然細長く見えない。

GoogleMapで今いる場所と、パンフレットの地図で「三郎岩」の場所を確かめるが、方向は間違っていないようだ。周りをみても岩が3つ並んでいるところは他にない。

「見る角度によって、形が違うのかもしれない」

と自分を納得させる。

三郎岩
三郎岩

17:30 宿に向けて、来た道を引き返す。日没までまだ少し時間があるので、宿の近くの隠岐神社に行くことにする。

隠岐神社

17:45 隠岐神社に到着。鳥居をくぐり中に入ると、シートで覆われた土俵を見つける。境内の奥に進んでいくが、本殿を含めてなかなか立派な神社だ。

失礼ながら、かなり田舎でも立派な神社をよく見かけるが、ここもそんな感じがする。後鳥羽天皇を祀っているそうなので、それで立派なのかもしれない。

隠岐神社
隠岐神社

本殿で地元の方と思われる一人の男性と挨拶を交わす。その方は戻って行くとき、自分が来た神社の入り口ではなく、横道に逸れて歩いていく。

「あっちには何があるのかなぁ」

一通り本殿を見学して、挨拶を交わした方が歩いて行ったほうへ行ってみる。そこには後鳥羽天皇の行在所跡と御火葬塚があった。

そこから県道317号線に出て、隠岐神社の入り口に止めていた自転車に戻ると、先ほど境内で挨拶を交わした方ともう一人別の方が立ち話しをしている。

今日のツーリングはこれにて終了。隠岐神社から役場の少し先にある「スーパーもとよし」で買い物をして、宿に向かう。

民宿かつた荘

18:15 宿に到着。今日のお宿は「民宿かつた荘」。宿には、普通の家のような玄関はあるが、宿の入口という感じには見えないので、他にそれらしい所がないか探す。

すると、隠岐神社のほうからこちらほうに人が走ってくる。その方が宿のご主人で、さっき隠岐神社の前で、境内で挨拶を交わした人と立ち話しをしていたもう一方の人のようだ。

宿の入口はこの玄関との事で、自転車は車庫に入れさせていただく。これで盗難やいたずらの心配はないので、非常にありがたい。

部屋は広めでこたつがあり、民宿としては至って普通。お風呂とトイレは共同。すぐに洗濯をして風呂に入り、海鮮中心の晩ご飯に満足する。

食事が終わり、明日は朝早く出発するので、お主人に今日のうちの精算をお願いして部屋に戻る。しばらくして、ご主人が部屋に来たので宿泊代を支払う。ご主人はお釣りを取りにいくが、すぐに戻って来ない。

しばらくして戻ってくるが、少し息づかいが荒い。どうやら小銭をつくるため、急いで外出して戻ってきたらしい。

ご主人は時間がかかったことを詫びたが、こちらこそ急いでいただき申し訳なく思う。

ここの宿泊代は、一人で泊まると、二人以上より1,050円割り増しになる。事前に調べた限り、この島の他の宿も同じところが多いようだ。

それから、可燃物ゴミは処理してくれるが、不燃物は持ち帰る必要がある。

晩飯後は、いつも通り部屋でビールを飲みながら、今日のことを振り返り、明日の予定を考える。

明日は、まず中ノ島を1周したあと、9:00の船で西ノ島に行き、島内を周ってそのまま泊まる。

中ノ島は1周が約17kmで、南端の先にはいかない予定。時間でいうと1時間ちょっとで周れる計算だが、離島特有の上り坂や自転車トラブルを考え、余裕を見て7:00に宿を出発することにする。

なお、後で知ったのだが、この中ノ島にある海士町はIターン移住者が多くて有名だという。


走行時間:4h57m26s 走行距離:69.29km
平均速度:13.9km/h 最高速度:39.3km/h