3日目 2008年7月27日(日) -
今日もイイ天気。
出発前、宿の玄関に置いている自転車を目視で点検していると、子供連れ?の宿泊客の女性に話しかけられる。会話の内容はほとんど覚えていないが、ただ、その女性が、
「タイヤ、ほっそー。タイヤ、ほっそー」
と仕切りに言っていたことだけ覚えている。
「GIANT MR 4F」のタイヤ幅は1インチ(2.54cm)しかない。ママチャリのタイヤに比べたら、メチャクチャ細いので、そう思うのも無理はない。
7:49 宿を出発。フェリーターミナルに向かう。
フェリー乗り場に着くと、港にはフェリー「おろろん2」が停泊している。フェリーといっても、小さな天売・焼尻を結ぶ船なので、さほど大きくはない。それでも最大定員は300人で、車両も10台ほど積めるらしい。
乗船手続きをするため、ターミナルに入る。ターミナルというより待合所といったほうがしっくりくる。
待合所の中は、乗客が数人いる程度で全然混んでいない。
乗船名簿に名前や住所、目的地(焼尻)、自転車が1台あることを記入して窓口へ行く。焼尻までの片道運賃は2等で1,650円也、プラス自転車の運賃が820円也。自転車の運賃は人間様の半額もする。
運賃を支払い、乗船切符と車輌・特殊手荷物輸送整理書、自転車に括り付ける「焼尻」と手書きされた紙の札をもらう。
自転車に戻り、ハンドルに紙の札を括り付け、フェリーの後ろから自転車を押して車輌甲板に入る。自転車を船員さんに預けて、上の客室ではなく、デッキに上る。今日は天気がいいし、海も穏やかなので、しばらくここで過ごそうと思う。
出港までまだ少し時間があるので、海の先を眺めていると、沖合にうっすらと、平べったい島、そしてその左にもっと霞んでいて、右の島より標高が少し高い島が見える。右が焼尻島、左が天売島だろう。なんとか写真に映すことができた。
他の乗客もデッキに上ってくる。
8:30「おろろん2」羽幌港出港。
フェリーが出港すると、たくさんのウミネコが追っかけてくる。そして、やはりというか、乗客によるウミネコへの餌やりが始まる。ウミネコもそれを知っていて追っかけてくるようだ。フェリーに乗ると、よく見かける光景だ。
船の速度に合わせて、人間が差し出した餌を、ウミネコがタイミングよく咥えて取っていく。「うまいものだ」と少し思ったりもするが、それより「なんだかなぁー」と思わずにはいられない。微笑ましい光景とは全然感じない。
フェリーが出港して、陸からかなり離れても、ウミネコはズッとついて来るし、船に止まっているヤツもいる。
船が航行していても全然寒くはなく、むしろ気持ちいいので、焼尻までデッキで過ごすことにする。
焼尻島がだんだん近づいてきて、島の形がハッキリしてくる。ほぼ平坦で高い山や丘は見えない。なだらかな坂はあるだろうが、急坂はあまりなさそうだ。
焼尻
9:30 焼尻港到着。
車輌甲板から自転車を押して外に出る。岸壁では、フェリーで運んできた段ボールなどの荷物が出されていて、島の住人が集まって来る。
港には小さな待合所があり、隣に土産物屋と食堂がある。待合所の前にあるベンチには、地元の人らしきおじいさんが2人座って一服している。田舎ではよく見かける光景だが、おじさんの横にバーベキュー用のコンロが入った箱が置いてあるので、フェリーで運ばれてきた荷物を取りに来ただけかもしれない。
それにしても天気がよく、風も弱く、絶好の「島旅日和」になった。早速、島を周ることにする。
港から島を周回する道道255号線に上る途中にもオロロン鳥の馬鹿デカいモニュメントが立っている。ここ焼尻島も羽幌町なのだが、このモニュメントはいったい町内に何箇所あるのだろうか?
なかなかインパクトのあるモニュメントなのだが、オロロン鳥の黒い頭には、ウミネコの糞のせいで白い足れ筋が入っていて、なんだか虚しい…。
港を出て、まずは時計回りに海岸線を1周する。
道道255号線を南に進路を取る。集落はあるが、全然人気がない。少し高いところまで来ると、乗ってきたフェリーがちょうど港から出ていくので見送る。
集落を出ると波の音と鳥の鳴き声しか聞こえない。
右へカーブし、西へ進路を変えて少し走ると、それまでの片側1車線の道から車が1台通れる程の道になる。車は離合できそうにない。この先は民家がないということだろう。
道が狭くなるところで、大きな厩舎のある牧場の横を通る。めん羊牧場のようだが、放牧されている羊はおらず、いるのはヤギと飯を食っている犬だけ。犬も囲いの中にいるので牧羊犬だろうか?
めん羊牧場を通過すると、小さいアップダウンが始まる。前方に天売島も見えてくる。
9:57「白浜野営場」に到着。野営場看板の隣に、妙な木のモニュメントがある。そのモニュメントをみると「ラナルド・マクドナルド上陸地」と書いてある。
「ラナルド・マクドナルドってだれ?」
と思いつつも、興味ないので、少し上に見えるテントサイトらしきところへ行ってみる。
ちなみに、後でこのラナルド・マクドナルドさんについてちょっと調べてみると、日本に密入国するため最初に漂着したのが、ここ焼尻島だったそうで、その後、英語の教師になったそうだ。
少し道を戻り、高台へ続く道を上ると、そこはやはりテントサイトだった。眺めはいいが、ほとんど斜面であまり広くない。風が強いと避けるものがないのでちょっと厳しそうだ。
下に、新しい建物が2棟立っている。トイレと炊事場だろう。その建物の影にテントが2つ張ってあって、キャンパーらしい人もいる。風のことやトイレ、炊事のことを考えると、あそこにテントを張るのがいいように思う。
少し離れた牧草地に、何やら「白いもの」が見える。放牧されているめん羊のようだ。
野営場を出発する。「白いもの」の横を通ると、それはやはりめん羊だった。
さらに西へ進んで行くが、見えるのは日本海と海岸線の断崖、小さな何隻かの漁船、あとは草原の中に続く細い一本道だけだ。
一度だけ、自転車の人とすれ違う。ママチャリなので、多分、自転車をレンタルして島を周っている観光客だろう。小さいとはいえアップダウンが続くので、ママチャリだとかなり大変そうだ。
そして長い上り坂を上っていくと、正面に天売島が現れる。
10:26「鷹の巣園地」に到着。駐車場にトイレ、東屋があり、その先の少し高いところにベンチがあるので、そこで休憩する。
周囲360°見渡せ、青空と海が広がり、目の前には天売島が見えて、抜群に眺めがいい。北海道本土も微かに見える。ここが焼尻島で標高が一番高いところのように思う。
ただ、こんな眺めがイイ場所なのに、自分以外は誰もいない。
せっかくなので、パノラマ写真も撮ってみる。眺めが良すぎて、なかなか離れがたいところだ。
目の前に見える天売島は、焼尻の後に行くのだが、間違いなくここより標高の高いところが多い。上り坂はここより長くキツいだろう。
天売島からフェリーがこちらに向かってやってくる。多分、今朝羽幌から乗ってきた「おろろん2」で、天売から焼尻経由で羽幌に戻る便だろう。
「鷹の巣園地」を後にして、進路を北に取る。
天売島を見ながら、急坂を下りていくと、海に二人乗りのシーカヤックが見える。天気がいいので気持ちよさそうだ。
急坂を下りきると、道が片側1車線と広くなり、民家も出てくる。
西浦の集落に入る。焼尻港周辺以外はほとんど民家はないだろうと思っていたが、予想外に民家が多くて、意外だった。ではあるものの、ここも人気が全然ない。
西浦の集落を抜け、坂を上ると豊崎の集落に入る。すると、前方に信号機が見えてくる。焼尻で初めてみる信号機だ。多分、島唯一の信号機だろう。
その信号機は押しボタン式で、陸側には焼尻小中学校がある。そして横断歩道を渡った海側にはグランドがある。
グランドのすぐ向こうには、日本海の水平線が広がっていて、学校のグランドにしてはすごいロケーションだ。今日は天気がよく、風も穏やかなので、いいところにあると思ってしまうが、本来は風の強い日が多いだろうし、夏以外は寒そうに感じる。
そして、グランドの海側にある、普通のバックネットより背が高く横幅の大きいネットにも目が止まる。あれくらい大きくしないと、ボールが海にいってしまうのだろう。
豊崎の集落を抜け、また坂道を上っていく。上り切ると、左手前方に何やら碑のようなものと、その崖下に海鳥の群れが見える。
11:07「工兵街道記念碑」に到着。工兵街道と言われてもピンとこないが、多分、道ができたことの記念碑だろう。ここでも海を見ながら、ちょっと休憩する。
11:16 焼尻港に戻る。
少し早いが昼飯を食おう。焼尻に来たからには今が旬の「ウニ丼」しかない。サフォーク(ラム肉)でもいいのだが、一人で焼肉をするのもナンだし…。もし漁が休みでウニがなければ、サフォークにしよう。
フェリーターミナルの隣にある店に入る。店の名前は忘れたが、ツーリングマップル(2007年度版)に書いてある「『うにぎりが人気』の『ヤマサ食堂』」ではないようだ。
「ウニ丼」があるので、早速注文する。そしてウニ丼と海藻の入った味噌汁が出てくる。確か、値段は3,000円か3,500円ぐらいだったと記憶している。
外にあるテーブルで食べる。ものの5分もたたずに完食。やはり焼尻のウニは美味かった。
焼尻2周目
そして、2周目に出発する。今度は島の内陸にある「ウグイス谷」や「オンコの荘」のほうに行ってみようと思う。
観光パンフレットの地図をみると、役場支所の横にある「会津藩士の墓」から「ウグイス谷」へ続く道がある。自転車で通れるかわからないが、とりあえず行ってみよう。
布目旅館の横にある細い急坂を上ると、役場支所の前に出る。そのすぐ左に「暑寒別天売焼尻国定公園 イチイ原生林」と書かれた大きな案内板があるので、そこを入っていく。
すると、「会津藩士の墓」と「オンコ原生林入口」と書いてある案内板がある。ここが「ウグイス谷」と「オンコの荘」への入口だろう。
11:47 オンコ原生林に突入する。
案内板の先には、遊歩道のような急坂の舗装路が続いているので、そのまま自転車で入っていく。
しばらく走ると最初の分岐。分岐には、「⇦うぐいす谷」の案内板があるが、道が狭いので、そのまま直進して「オンコ原生林」と「雲雀ヶ丘公園」のほうへ向かう。
森の中を進んでいくと、再び分岐。道幅が少し狭くなるが、路面が綺麗な右の道へ進む。
しばらく走ると、何やら怪しげに変形した木が現れ始める。奇木「エゾ鹿」、奇木「知恵の輪」、「幻想の径」と名付けられた変形した木が続く。「エゾ鹿」、「知恵の輪」は、ナラの木らしいが、なんで変形しているのかはよくわからない。
再び、分岐に出る。
左は焼尻港なっているので、その前の分岐の、左の道がここに続いているのだろう。右は鷹の巣園地なっていて、ここから森の出口が見えている。
直進が「オンコの荘」、「ウグイス谷」になっているので、直進する。ただ、遊歩道は舗装されているが、一段と狭くなる。木々の間を遊歩道が走っているような感じなので、枝や葉っぱが普通に当たる。途中で自転車を押しながら歩く。
「ウグイス谷」に到着。ここには「姥松」という大きな松があり、その先に木の橋が見える。谷にかかっている橋のようで、この谷が「ウグイス谷」なのだろう。周りはうっそうとした森が広がっていて、まるで人気がない。自転車を橋の上に止めて、しばし休憩する。
橋の先は階段になっているので、引き返して「オンコの荘」へ向かう。
その途中、珍木「歓喜木」と珍木「天狗の腰掛け」と名付けられた木がある。これも変形した木だが、さっきまでは奇木、今度は珍木。違いがわからないが、まぁ気にしないことにしよう。
12:17「オンコの荘」に到着。
ドームのようになったデカいオンコの木があり、中に入れるので入ってみる。腰をかがめないといけないが、中は結構広い。何本ものオンコの木が絡み合ってドームのような形になっているようだ。
オンコの木は、昔、実家にも1本あったが、全然大きさが違う。
「オンコの荘」を出発して、海岸のほうへ下りていく。草原と海が広がり、気持ちのいい風景だ。
12:31 本日2度目の「白浜野営場」と「ラナルド・マクドナルド上陸地」に到着。「ラナルド・マクドナルド上陸地」の前に、海の方に下りれそうな道があるので、自転車を置いて行ってみる。
その道のすぐ先は、下の岩場に下りれる階段になっている。下まで下りると、周りは干潮のせいか、岩礁が出ていて、数人がのんびりと釣りをしている。ラナルド・マクドナルドさんはここに上陸したらしい。
階段を戻る途中、上から一人の男性が下りてくる。挨拶を交わし、擦れ違うが、地元の人ではなさそうだ。上の道まで戻ると、そこにはロードバイクが止めてある。擦れ違った男性のものだろう。自分と同じく、自転車で島を旅しているようだ。
「白浜野営場」を出発。次は島の内陸にある「オンコ海道」を通って「鷹の巣園地」に向かうことにする。
野営場を出発して坂を上ると、分岐に出るので右折する。さらに上っていくと、右手の牧場の柵に数頭のめん羊が固まっている。焼尻に来て、ようやくめん羊が見れた。
「これが東京の料亭?でしか食べられない高級サフォーク肉になるのか…」
めん羊は何頭か重なり合うように戯れている?のだが、頭が真っ黒なので、何頭いるのかさっぱりわからない。少し近づいてよく見てみると、少なくとも7頭は重なり合っているようだ。特に人間を気にしていることもない。
「いったい何をしているのだろう?」
「オンコ海道」に向かっていく道の両側は、めん羊牧場が広がっていて、何十頭かのめん羊が草をはんでいる。
眺めがよく、時間もたっぷりあるので、途中の牧草地のゲート前で、しばらく座って休憩する。海の方を見下ろすと、何とも言えない、のどかでのんびりとした風景が広がっている。
12:56「オンコ海道」に到着、左折する。牧草地は続くが、ここにめん羊はいない。トラクターが牧草を刈っている。
「オンコ海道」は島の内陸を走る道だが、「海道」と呼んでいるだけあって、海と草原が見えるだけの眺めのいい景色が続く。そんな中をゆっくりと西へ走る。
本日2度目の「鷹の巣園地」に到着。眺めがいいので、今回もしばらく休憩する。
これで焼尻はほぼ周った。この後、港に戻って、次の高速船に乗ってしまうか、それとも予定通り次の次のフェリーまで待とうか迷う。
どっちにせよ、とりあえず、港のほうに戻ろうと「鷹の巣園地」を出発する。
ここから道道255号線を時計回り(北回り)に進むのは1周目と同じになので、今回は1周目とは逆の反時計回り(南回り)で焼尻港へ向かって走ることにする。逆向きだと見える景色もかなり違うはずだ。
しばらく、眺めのいい海岸線を見ながら下っていく。1周目では気づかなかった風景だ。
焼尻港に戻る。次の天売行きの高速船まで、まだ少し時間がある。
海に下りる岩場で出会ったロードバイクの男性が、自転車を折り畳んでいる。どうやら次の高速船に乗るようだ。
それを見て、自分も自転車を折り畳んで高速船に乗ろうかとも思ったが、面倒臭いのでやっぱりこの後の15:40のフェリーに乗ることにする。
焼尻3周目
そうなるとフェリーの時間まで、まだ1時間以上もあるので、3周目に出発する。今度も反時計回りに走ることにする。
豊崎、西浦の集落を抜け、鷹の巣園地への急坂を上る。この急坂、1周目に下っている時に気づいてはいたが、10%を超える激坂だ。
14:47 本日3度目の「鷹の巣園地」に到着。フェリーの出発まで、あと50分。さすがにもうこれ以上周るところがないので、少し時間を潰すことにする。
展望台で海を眺めていると、天売に向かう高速船が見えてくる。
「やっぱり、フェリーよりかなり速いな」
「鷹の巣園地」を出て、今度は「オンコ海道」を東へ走る。さっき逆向きに走った時は、刈っただけだった牧草がロール上になって転がっている。
めん羊牧場のところの分岐で右折して道道225号線に出る。
焼尻港に到着。こぢんまりとしたフェリーターミナルで天売までの切符を買う。運賃は2等で760円也。一方、自転車の運賃は820円と、羽幌ー焼尻間より区間が短くなったにもかかわらず同額だ。調べると、自転車は距離に関係なく、1区間820円の定額だった。
外に出ると、フェリーが港に入ってくる。今回も「おろろん2」だ。というか、羽幌ー天売焼尻間のフェリーは「おろろん2」しかなく、1日2往復。ちなみに高速船も「さんらいなぁ」の1隻。
15:40 焼尻港出港。十分過ぎるほど焼尻を堪能したと思う。
少し離れた海から焼尻島全体を見てみると、やはり島の西側が高くなっていて、「鷹の巣園地」の標高が一番高いように思う。その「鷹の巣園地」にあるトイレや「鷹の巣園地」に上っていく激坂もフェリーから確認できる。
天売
16:05 天売港到着。フェリーターミナルは焼尻とほとんど一緒に見えるし、港全体の風景も焼尻に似ている。ここにも、頭からウミネコの白糞が垂れているデカいオロロン鳥がいる。
天売は、旅前に調べたところ、絶滅危惧種のオロロン鳥、ウトウの帰巣、そして「赤岩」が有名らしい。ウトウの帰巣はシーズンが終わっているので見れそうにない。とりあえず島の西端にある「赤岩」まで時計回りで向かう。
日没まで2時間以上あるので、1周することもできるだろう。
港を出て道道548号線を上っていると、丘の上に大きな建物が見える。焼尻にはなかった大きな建物だ。どうやら民宿らしい。
坂を上り切ると、弁天、前浜の集落に入る。前浜の集落で、今日泊まる宿の看板を見つける。これで宿の場所は確認できた。
右へ大きくカーブして、和浦の集落に入ると商店を発見。ここで買い物ができそうだ。天売は焼尻より人が多く住んでそうで街っぽい。買い物できそうな店もあって、とりあえずよかった。
和浦の集落からしばらく走ると、民家は減り、やがてなくなる。道幅もそれまでの片側1車線から、いわゆる1.5車線道路に狭くなる。
そして、右手にそこそこの高さの丘と、それを上っていく急坂の道が見えてくる。あれが「赤岩」へ続く道だろう。
急坂の手前に「黒崎海水浴場」と辛うじて読み取れる小さな看板があり、そこには、「⇨赤岩頂上2950m」と書いてある。やはり、天売は焼尻より山登りがキツそうだ。
それより、「マムシ注意」と赤字で書かれた大きな注意看板のほうがかなり気になる。
「こんな北の小さな島にもいるのか。焼尻でマムシの看板は見なかったなぁ」
念のため、気をつけて行こうと思う。
上り始めると、いきなり10%超の急坂で、その後も多少緩くなるところはあるものの、キツい上りが連続する。
坂の途中で休憩。振り返ると、上ってきた急坂と、海の向こうに焼尻島が見える。
その後も10%超の坂が2回ぐらいあり、マムシのことはすっかり忘れる。
かなり疲れたところで、ようやく前方に建物と灯台が見えてくる。建物の前までくると、それはトイレだった。トイレの横に駐車スペースがあるが、車は止まっていない。
灯台のほうへ行くと、手摺のある通路があるので、あの先に「赤岩」の展望台があるようだ。
通路の入口に自転車を止められるところがないので、トイレまで戻る。トイレの横に自転車を止め、展望台へ向かう。
通路の入口にある階段まで来ると、その周辺の地面は穴だらけだ。これがウトウの巣のようだ。よくみると階段周辺だけではなく、そこらじゅう穴だらけ。
階段を上り、「赤岩埼灯台」を見ながら通路を進む。通路周辺の地面も穴だらけだが、ウトウは1匹もいない。
それより、これだけ穴だらけだと、通路の足場が崩れないかと心配になる。なにせ、ここは高さ100m以上ある断崖の上だ。
通路の端まで来ると、正面は日本海の水平線が広がるだけの絶景。絶景なのだが、方向が真西なので、夕日で逆光になっている。
通路の端には、下りの長い階段がある。下りたところが展望台のようだ。
16:46「赤岩展望台」に到着。周りの斜面もやはり穴だらけだ。穴のせいなのか、それとも風雪が強いせいなのかわからないが、赤岩埼周辺はあまり草地がなく、赤茶けた地面がむき出しになっているところが多い。
展望台の下になんとか「赤岩」が見える。展望台の直下に、展望台の土台と思しきコンクリートの塊があるので、「赤岩」全体を覗き込めるところが限られている。
ではあるが、今は誰もいないので、順番待ちすることなく、いくらでも覗き込める。
「赤岩」は、上からみるとあまり大きさを感じないが、高さが48mもあるらしい。草か苔のようなものが生えていて、あまり赤く見えないが、周りの地面が赤茶けているので、多分、赤い岩なのだろう。
少し離れた断崖上には、海鳥のコロニーらしきものも見える。あれはウトウではなく、ウミネコだろう。
誰もいないので、写真を撮りながら、しばらく景色を堪能する。
「赤岩展望台」を出発。
自転車まで戻り、次に「海鳥観察舎」へ向かう。北に向かって走り出すと、いきなり10%をはるかに超える坂が登場する。高い木がないので時折焼尻島が見える。写真を撮って休憩しながら、しばらく続くキツい坂を上る。
坂を上りきり、少し下り始めた先に案内板のようなものが見える。
17:06 千鳥ヶ浦に到着。駐車スペースがあるので、そこに自転車を止める。オロロン鳥ではなくカラス数羽が電線にたむろしている。
海側に「海鳥観察舎」へ続くらしい道があるので、歩いて向かう。歩いていくと、右手に大きな断崖が見え始める。
さらに進むと、小さい丘の影に小屋の一部が見えてくる。あれが「海鳥観察舎」だろう。丘に上ると、小さな観察舎と断崖の続く海岸線が見渡せる。なかなかいい景色だ。
観察舎まで下りて中に入る。中はそう広くないが、天売島にいる海鳥の説明パネルと観察用の望遠鏡がある。望遠鏡は無料だ。
早速、望遠鏡を覗いてみる。ウミネコはすぐわかるが、もう1種類、別の海鳥が見える。
「あれはオロロン鳥を呼び寄せる置き物?、それとも本物のオロロン鳥?、それとも別の海鳥?」
説明パネルの写真を見てみる。見えた海鳥は全身が黒か灰色っぽかったので、ペンギンのような白い部分のあるオロロン鳥ではないだろう。よくわからない。
「海鳥観察舎」を出て、自転車まで戻る。カラスに荷物を荒らされた形跡はない。次は「観音崎展望台」に向かう。
千鳥ヶ浦を出発すると、さらに上る。この先のピークが天売島の道のピークではないかと思う。
17:23 道道548号線のピークと思われる地点に到着。ここから焼尻島が一望できる。北海道本土は霞んでいて見えない。この後は焼尻島を見ながら、どんどん下っていく。
17:32「観音崎展望台」の入口に到着。左折して、しばらく行くと駐車場に出る。ここに自転車を止めて、さらに奥にある展望台へ歩いて向かう。
17:36「観音崎展望台」に到着。絶景の一言。
夕日で少し逆光であるが、赤み始めている。もっと時間が経てばいい夕焼けになりそうだ。
正面に見える低い草木で覆われた海岸線は、海に突き出た半島のようにも見えるが、あそこは今通ってきた天売島の西側部分だ。パノラマ写真を撮ってみるが、逆光でうまく撮れない。
これで天売の予定は一通り終了。もういい時間なので、あとは買い物をして宿に向かうことにする。
「観音崎展望台」の入口から天売港へ向かう下り坂からは、焼尻島が一望でき、これまた絶景。今のところ、この旅一番の絶景ではないかと思う。
下り坂ではあるが、何度も止まって写真を撮る。ここから見る焼尻島は、海にへばり付いて横たわっている巨大な生き物のようにも見える。
坂を下りきり、丁字路を左折する。しばらく行くと片側1車線の道に変わり、再び下る。
すると前方の急カーブに何かの案内板が見えてくる。
17:51「愛鳥公園」に到着。
せっかくなので、ちょっと寄ってみる。カラスがやたらと多いので、ここが寝床なのだろうか。カラスが「愛鳥?」ということではないだろう。
公園からは天売港が見下ろせ、焼尻島も見える。眺めはいいのだが、いかんせんカラスが多いのに閉口する。
公園内をざっと見て自転車まで戻ると、電話が鳴っているのに気づく。こんな時間にかかってくる電話なので、今日泊まる宿から「来るんですか?」みたいな問い合わせの電話でないかと思う。
電話に出ると、やはりそうだった。
「普通のお客さんは17時には来る」だとか、「何時の船に乗ってきたのか?」などなど、旅館の都合やあまり関係のない話しを電話で言われる。
まぁ、田舎の宿にありがちではあるが、もう少しで18:00になるので、旅館に泊まるなら確かにちょっと遅いだろうとも思う。到着時間も知らせていなかったように思う。
「自転車でまわっているので遅くなった」、「あと30分ぐらいで行きます」と告げると、ある程度、納得はしてもらったような感じだ。
急いで、川口商店で買い物をして宿に向かう。
ちなみに、この川口商店でもらったレシートをだいぶ経ってから確認すると、住所が「浦和」になっている。あそこは確か「和浦」だったと思うが…。
旅館オロロン荘
18:25 宿に到着。今日のお宿は「旅館オロロン荘」。1泊2食で8,400円也。部屋は6畳の和室で、トイレと風呂は共同。自転車は玄関フードの横に止めておく。雨の心配はないし、夜は真っ暗で何にも見えないだろう。
すぐに風呂に入って、晩飯。遅くなったので、とっとと済ませたほうがいいだろう。
晩飯は、ウニ、毛ガニ、アワビ、数の子、ホタテやエビの刺身、カレイの煮付け、酢ダコ、鍋物など海の幸ばかり。さすがは天売だ。ついでに瓶ビールも頼む。部屋食なので心置きなく、店で買ってきた黒ラベルも飲む。
飯を食い終わり、明日の予定を考える。明日は10:25発のフェリーで羽幌に戻るが、それまでどうしよう。
「海底探勝船おろろん号」で島1周クルーズができそうであるが、一人で乗るのもナンなのでやめておく。
観光パンフレットの地図をみると、島の内陸にいくつか道があり、その周辺に野鳥のいる森があるらしいので、そこらへんに行ってみようと思う。
窓の外は、小さい街灯が灯っているだけで、真っ暗。
今日は、走行距離は全然短いが、フェリーでの移動もあり、長い1日だった。でも、なかなかイイ景色がたくさん見れてよかった。寝る。
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