7日目 2020年8月26日(水) -
4:30頃、起床。トイレに行くが、やはり膝が痛く、管理棟の前にある階段に難儀する。
朝飯を食い、撤収にかかる。念のため、新冠まで行くことも考えて、早めに出発しようと思う。
膝が痛いので、出発の1時間前(7時頃)に薬を飲む。昼の12時頃にも飲むことにしよう。
テントを撤収するが、フライシートやグランドシートが全く濡れていない。昨日とは大違いだ。多分、風があったためだろう。そんなこともあって、7:40頃には、撤収を完了する。
テントは濡れていなかったが、カメラは相変わらず、調子が悪い。
荷物を載せて自転車を駐車場まで上げる。とそこで、駐車場に止めてあるバイクのナンバーを確認してみると、1台は「足立」で、もう1台は忘れたが、どちらも関東のナンバーだった。
左膝の張りと痛みが昨日より酷そうなので、出発前に駐車場でペダルを漕げるか試走してみる。
やはり最初の一漕ぎ目がかなりキツイが、まぁ何とかなりそうだ。
えりも
7:48 百人浜オートキャンプ場を出発。
ペダルを漕いで、膝の屈伸を続けていると徐々に楽になり、多少の痛みと違和感はあるが、しばらくすると昨日のように普通に走れるようになる。やれやれだ。
道道34号線に出るが、今朝行こうと思っていた「百人浜展望台(百人浜緑化事業観察塔)」は、膝の状態が酷いのでパスする。天気がいいのでちょっともったいない。
あとで思い出したが、「悲恋沼」に行くこともすっかり忘れていた。
襟裳岬へ向かっている途中に後ろを振り返ると、黄金道路の方は昨日より天気が良く、青空が広がり、豊似岳の稜線もはっきりみえて綺麗だ。
襟裳岬をパスできるショートカットの道があるが、丘越えになるので、襟裳岬周りで行く。
「百人浜第2展望台」も階段があるのでパスする。
えりも岬の集落に入り、坂を上っていると、大きなサイレンが鳴る。時間を確認すると8:30。多分、昆布漁の終了を知らせるサイレンだろう。沖に出ていたたくさんの小さな漁船が港のほうへ戻っていく。
襟裳岬に向けて最後の右カーブを上っていくと、岬の方が少しガスっているのが見える。
8:34 襟裳岬の入口に到着。やはり岬は若干ガスっていて、少し寒い。この分だとあまり景色を眺めることはできないだろう。昨日、来ておいてよかった。
この先もガスっていて寒そうなので上だけレインウェアを着ることにする。入口近くの駐車場で着ようと思うが、かなりの傾斜があって自転車を止めづらい。
襟裳岬に寄らず、すぐに出発。
出発してすぐにガスはなくなり、晴れている。ガスっているのは岬近辺だけのようだ。
襟裳岬から西側の道道34号線に入ると、周囲は木が全然生えておらず、牧草地が広がり、道の両側に海が見える。
右側(東側)には、えりも岬の集落や昨日通ってきた黄金道路方向の海岸線、豊似岳のある山塊が見え、左側(西側)には、これから向かう様似方向の海岸線やアポイ岳らしき山が見える。
襟裳岬の先端の見通しのいい高台を走っていることを実感する。
大きく左に90°カーブする。周りは木が全くない草原が続いているが、大きく落ち込んで窪んでいるところもあり、なんとなく「宗谷丘陵」っぽい感じもする。
そして、太平洋に向かって一気に下る。
東洋の集落へ下りる途中の坂道(襟裳岬をショートカットする道との分岐あたり)で、道を歩く昆布干しのおじさんから、
「ガンバレ」
と声が掛かる。
おじさんから声をかけられるとは思ってもいなかったので、咄嗟に、
「ペコリ」
と頭を下げただけで通過する。下り坂なので手を挙げられなかったのは仕方ないとして、せっかく声をかけてくれたのに、我ながらなんとも気の利かない、情けないお返しだったと反省する。
東洋の海岸まで下りると、テレビで見た覚えのある海岸線が目に入る。
東洋の手前から、勾配がキツめ(5%ぐらい)のアップダウンが続く。道路工事やシェルターの補修工事もチョコチョコあったりする。
アップダウンの繰り返しで、流石に暑くなったので、レインウェアを脱ぐ。しばらくアップダウンの続く丘陵地帯を走り抜けていく。
歌別の辺りから、前方の海岸線の向こうに高い山が見えたりする。あれはアポイ岳だろう。
どこかで海側の眺望が開かないかと思い走っていると、港のほうへ下りていく道にぶつかる。ちょうどそこから干してある昆布と港の向こうにアポイ岳の山並みが見えるので、写真を撮っておく。
9:39 国道336号線に入る。しばらく走るとここにも「北緯42°地点」示す石碑が置いてある。
えりも市街地に入り、セイコーマートでパンを買って休憩する。
えりも市街地を抜けて、しばらく走ると笛舞の集落に到着。ここから、国道336号線は海岸線を走る。前方は快晴に近い。いい陽気の海岸線を快走する。
日高耶馬渓
10:41 様似に入る。
しばらくして、2つの覆道に入るが、どちらにも歩道があり問題なし。
2つ目の覆道を抜けると、前方に海岸線まで迫り出している大きな岩山と、その手前に集落が見えてくる。あの岩山が「日高耶馬渓」だろう。アポイ岳の山裾がちょうど海へ落ち込んでいるところだ。
一方で、後ろを振り返ると、先端が低く、少し平坦になっている襟裳岬のあたりがまだ見えている。
この先は、岩山を貫く幌満トンネルを通らずに、ツーリングマップルに書いてある海岸線側の旧道を走ろうと思う。
幌満の集落を抜けて岩山に近づくと、ツーリングマップルの通り、幌満トンネルの手前で海岸線への分岐道が見えてくる。
そして、トンネルの手前で海岸線の道へ左折しようとするが、その入口に「通り抜けできません。この先200mゲートあり」との案内板がある。
どうやら旧道は途中で通行止のようだが、とりあえず行けるところまで行ってみることにする。あっちのほうが「日高耶馬渓」の断崖や襟裳岬方向の景色もよくみえるだろうし…
左折すると最初に橋があるが、もう整備されていないためか、道路のつなぎ目に大きな溝ができていて、通ると結構な衝撃がくる。パンクしないようにスピードを落として進む。だんだんと右から岩山が迫ってくる。
その先は釣り客の車が止まっていて、海岸線でのんびり釣りをしている人が多い。歩行者に気をつけてゆっくり進む。左手の海の向こうに襟裳岬に続く海岸線がよく見えて綺麗だ。
釣り客の車を抜け、右にカーブすると、ほぼ垂直の断崖絶壁が目の前に現れる。道の少し先にゲートが見えるので、その前まで行ってみる。
ゲートから先の道路脇には大きな岩礁があり、岩礁と断崖絶壁との間を縫うように道が続いている。断崖には落石防止のネットが張られているので、危険な道路であるということは想像がつく。写真を撮って、引き返す。
11:14 国道336号線に戻る。幌満トンネルは歩道があり、走行に問題なし。
トンネルを出ると、こちら側にも旧道への分岐があるが、旧道の入口にゲートがあり、全く入れない。ただ、ゲートの先をよく見ると、すぐ先の道路が落石で完全に塞がっている。やはりかなり危険な道のようで、通行止は当然だろう。
トンネルを出た後にもすぐに覆道があるが、トンネルから続いている歩道があるので問題なし。路面状態に気をつけながらも柱の間から見える海を眺めながら走る。
その覆道を走っていると、突然、柱の間隔が広くなり、覆道から外の海岸線へ出ていく分岐道に出くわす。
「なんだ、この道?」
と思いつつも、そのまま覆道内を走るが、
「ちょっと待て。ひょっとしたら、あの道はあそこから覆道の出口まで続いているかも」
と思い、自転車を止めてGPSで確認すると、予想通り、その分岐道は覆道の出口で国道に合流している。
「そういうことなら、外に出よう」
と思い、引き返して分岐から外の海岸線に出る。覆道の途中から外へ出ている道を通った記憶はあまりない。
海岸線に出ると、断崖絶壁の下に大きな立派な民家が建っている。
「こんなところに家が建っているのか」
と少々驚く。この道も旧道だと思うが、住民がいるので残されているのだろう。昔はもっと住んでいたのかもしれない。
当然、ここを通る車は皆無。
少し走ると、旧道にも覆道が見えてくる。あの覆道を過ぎると、襟裳岬方向は「日高耶馬渓」の断崖絶壁で見えなくなりそうな感じなので、後ろを振り返り、見納めの写真を撮っておく。
覆道に入ると、途中の柱に「←ルランベツ覆道の褶曲」という案内標識が掲げられている。覆道の中でこんな標識を見るのも初めてだ。覆道の外を見ると、大きな岩があり、その前に説明板があるので、あの岩のことを指しているのだろう。
とりあえず、すぐ近くなので見に行くことにする。
自転車を覆道の柱に立てかけて、柱の間から外に出て説明板のある岩へ行く。ただ、覆道から出るところに少し高さのある段差があるので、これ以上膝を痛めないよう気をつけて乗り越える。
「ルランベツ覆道の褶曲」は、「アポイ岳ジオパーク」のジオサイトの一つで、学術的に貴重な岩のようだが、素人の自分には単なる岩にしか見えない。
あと調べると、この岩は、角閃岩という岩の周りに片麻岩という岩が包み込むように巻かれている状態になっているそうで、この地層を褶曲というらしい。
覆道の柱の外側にも何やら説明板が貼ってある。みると、
「旅人がおそれた東蝦夷地最大の難所」
と書いてある。内容を読むと、
「日高耶馬渓の断崖絶壁は約100mの高さがあり、江戸時代の1799年に崖の上に山道を開削した」
とある。てっきりこの辺りも明治維新前後に開かれたところだろうと思っていたが、それよりも100年ぐらい前に山道が造られていたとは意外だった。
自転車に戻ろうと思う。ただ、覆道との段差を下りるときが左膝に一番衝撃がかかり、危なそうなので、段差のないところを探すが、近くにはない。
少し行った先にそんなところがありそうだが、離れているし、ここからはよく確認できないので、ここで下りることにする。
膝に衝撃がかからないよう、段差に腰をかけて慎重に歩道へ下りる。
ちなみに、ここは覆道なので車を止められるような場所はない。少し離れた覆道の外に止めるしかないだろう。
覆道を抜けると、こちらにも民家が1軒あり、玄関先で住人らしい人が訪ねてきたらしい人とおしゃべりをしている。
その先に短いトンネルが見えているが、その隣にもトンネルがあり、さらにトンネルの手前にはまた説明板がある。説明板をみると
「時空を超える3つの時代のトンネル」
と書いてあり、明治、大正、昭和時代に造られた3つのトンネルが写真で示されている。
目の前の、今現在使っているトンネルが昭和時代、すぐ隣にある海側に開いているトンネルが大正時代に造られたものということはすぐわかる。
ところが、明治時代のトンネルが見えない。大正時代のそれより左側(海側)にあるはずだが、その前にトタン板の掘っ立て小屋が建っているので、道路からは見えないのだ。塞いであるのか、崩れたのか、それともは物置か何かに使っているのかわからない。
現在使っている昭和時代の山中第二隧道を抜けると、またしても左手に説明板がある。見ると、
「大正トンネルの花こう岩類、花こう岩類の露頭と旧トンネル100m→」
と書いてある。某テレビ番組に出てきそうな場所だが、興味がないので通過する。
11:36 国道336号線に復帰。
合流点にも「日高耶馬渓」への案内標識や、「プレートの衝突現場といにしえの道」の説明板があったりと、この辺りは「アポイ岳ジオパーク」のジオサイトが集中しているようだ。
国道336号線をしばらく走ると、前方遠くに街並みが見えてくる。様似の街だろう。
次の冬島漁港にも「冬島の穴岩」という案内板がある。案内板の矢印の指す方向に、それらしい大きな岩が道路から見えるので、ここから写真だけ撮っておく。
アポイ岳ジオパークビジターセンター
しばらく走り、小さな緑橋を渡ったところで、対向車線の路肩に「アポイ山麓ファミリーパーク」の小さい案内板を見つける。「アポイ山麓ファミリーパーク」はキャンプ場で、そのすぐ近くに「アポイ岳ジオパーク」のビジターセンターもあるはず。
事前の予定では、ビジターセンターに寄るつもりだったが、できれば新冠まで行きたいし、案内板の先は上り坂になっているので、なんとなく行く気が失せて、ビジターセンターに向かわず、そのまま直進してしまう。
様似の街が近づき、海に突き出た「エンルム岬」っぽいところも見えてくる。
それよりも海が綺麗なことに目が止まり、エメラルドグリーンのような色のところもある。天気はいいし、ツーリングには最高にいい海岸線だ。正直、日高の海でこんなところがあるとは思わなかった。
そんな感じで快走していると、前方に「アポイ岳ジオパークビジターセンター」の大きな看板が見えてくる。
12:00「アポイ岳ジオパークビジターセンター」への分岐に到着。
時間をよく考えると今日は新冠まで行くのは無理だ。そうなると、時間は十分過ぎるほどあるので、予定通りビジターセンターに寄ることにする。
この道がビジターセンターやアポイ山荘、キャンプ場へのメインルートのようで、案内板によると、ここからビジターセンターまでは1.2kmの距離だ。
勾配が5%ぐらいの新しくて立派な道路を上っていると、左側から、
「バサバサッ」
と草をかき分けるような音が聞こえる。
「なんだ?」
と思い、音がした左のほうをみると、斜面の上の草むらにエゾシカが2頭いて、森の奥へ逃げていく。意外にも、これがこの旅初のエゾシカ遭遇だ。
坂道を上っていくと右手から道が合流してくる。これがビジターセンターへ行くのをためらった道だろう。
サイコンで国道からの距離を計りながら走り、そろそろ1.2kmというところで、国道にあった案内板の通り、左にアポイ山荘の大きな看板とキャンプ場を示す小さい案内板がある。
が、肝心のビジターセンターの案内板がない。
「キャンプ場の方だろう」と思い、直進してキャンプ場の駐車場の横を走っていると、路肩に「ビジターセンター500m先」との標識を見つける。
国道から1.2km先にあったのはアポイ山荘とキャンプ場の入口だけで、ビジターセンターは1.7km先のようだ。国道にあった案内板に騙された。別にいいが…
木の隙間からキャンプ場のテントサイトが見えるので、走りながら中を覗くと、平坦で広そうでなかなかいいキャンプ場のようだ。道路からはテントが1張りしか見えないが、まだ昼過ぎなので少ないのかもしれない。
12:12 アポイ山荘の入口から、さらに500m上らせれて「アポイ岳ジオパークビジターセンター」に到着。自販機の横に自転車を止める。
早速、中に入る。入館料は無料で、大体どこのビジターセンターも無料なので想定通り。お客さんは自分以外におじさんが1人だけだ。
アポイ岳といえば、世界的にも珍しい山ということをテレビ番組で知ったのだが、その理由を思い出せない。
展示物を見学して、「アポイ岳は、本来地下深くのマントル部分にある「かんらん岩」が地表に露出している山」ということを思い出す。
それから、「アポイちゃん」と「カンラン君」というゆるキャラ?がいるらしいことも初めて知る。
もう1人の訪問者であるおじさんは、途中から見境なく?展示物の写真を撮り始めた。何かに目覚めたのか?、それとも写真を撮る基準がよくわからなくなってきて、とりあえず全部撮っておけ〜と思うようになったのか?定かではない。
一通り見学して外に出ると、敷地内をエゾシカ2頭が悠然と歩いていて、森の方へ去っていく。
ビジターセンターの入口横にあるベンチで、昼飯のパンを食べて日焼け止めを塗りながら休憩する。
帰り際、ビジターセンターの下にあるトイレへ用を足しに行く。その途中、アポイ岳の登山口があり、「熊出没注意」の看板がある。
登山口なので注意看板があるのは普通だが、そのことより隣のキャンプ場も山に近く、周辺でエゾシカもよく見かけるので、「ここのキャンプ場はヒグマが出没するかもしれないな」と思う。
今日はここに泊まらないので、「まぁ別にいいか」とも思う。
13:05「アポイ岳ジオパークビジターセンター」を出発。
国道336号線に復帰し、様似市街へ向かう。相変わらず天気が良く、海岸線の景色が綺麗なので写真を撮りながら進む。
トラブル発生
13:17 海岸線を快走していると、道が平坦にもかからわらず、急に自転車が重くなる。
「この感覚は、もしや!」
と思い、止まってリアタイヤを触ってみると、ガッツリ空気が抜けている。
「あーパンクだ、やっぱりついにきたか」
パンクせずに旅を終えれば一番いいのだが、過去の旅でもなかなかそう上手くはいかなかった。いずれパンクするだろうとは思っていたので「ついにきたか」という感じだ。
すぐにチューブの交換作業ができる場所を探す。
右の山側に、砂利の上に雑草が生えた広いスペースがあるが、あんなところで作業をすると、物を無くす危険がかなりあるので、やりたくない。
本来ならアスファルトかコンクリの上でやりたいが、近くに建物が全くないところなので、そういう場所もない。
止むを得ず、砂利スペースへ移動して、直射日光の中、作業をすることにする。
まずタイヤを外して表面を確認すると、長さは短いが、もう少しで貫通しそうな(タイヤの裏側からもみてもわかるぐらい)深い亀裂がある。
この小さな亀裂は旅前に確認していたが、深さまでは確認していなかった。旅前から深かったのか、走行中に深くなったのかはわからない。
次にチューブを確認すると、タイヤの亀裂と同じような形の傷があり、裂けている。ここがパンク箇所のようだ。タイヤの亀裂と同じ場所かどうかはわからないが、タイヤの亀裂がパンクの原因かもしれない。
となると、タイヤの亀裂も補修しないとまたパンクしてしまうので、亀裂のあるタイヤ部分の裏側に大きめのゴムパッチを接着剤で貼っておく。そしてチューブを交換する。
念のため、気休めだが、亀裂のあるタイヤの表面側にもリムテープを貼っておく。そのうち剥がれるか、刷れるかしてなくなってしまうだろうが、多少の時間稼ぎにはなるだろう。
慎重に作業しつつ、順調に作業は進んでいたが、ここで恐れていた事態が発生。リアタイヤをフレームに嵌めるとき、クイックリリースのバネを落としてしまう。あわてて探すも石ころと雑草で見当たらない。
「まったく、これで旅が終わっちゃうぞー」
などと1人で文句を言いながら、雑草を抜いたり、大きめの石をどかしたりしながら必死に探す。
半分諦めかけていたとき、なんとかバネを見つける。やれやれ。
同じことをしないために、自転車を多少広めの路肩に移動してタイヤを嵌める。ここで、もう一度やれやれ。やはり、あそこで作業するべきではなかった。
本来、リアタイヤはクイックリリースのナットを緩めるだけで外せるので、ナット部分のバネを外すことはない。
自分の場合、輪行時(特に飛行機)にリアディレイラーを保護するため、「ディレイラーガード」なるものを付けているのだが、この取り付け穴にクイックリリースのシャフトを通して取り付けている。
これでもリアタイヤを外すときは、クイックリリースのナットを緩めるだけでいいのだが、タイヤを嵌める時、シャフトにぶら下がった「ディレイラーガード」が非常に邪魔になる。
それで、一旦「ディレイラーガード」を外すため、クイックリリースもタイヤから外しているのだが、そのためバネやナットも一旦ばらけてしまうのだ。
前から面倒だとは思っていたし、もう少しいい方法はないかとも思っていたが、稀な作業なので、そのままにしていた。次回の自転車旅までに、別な方法を考えたほうが良さそうだ。
ともかく、無事に作業は終わったが、結局、1時間近くもかかってしまった。本来、チューブ交換だけなら20分ほどで済むのだが、タイヤの補修が必要だったり、余計なクイックリリースナットの捜索にも時間を要してしまった。
14:17 様似市街に向け出発。走ってもリアタイヤは問題なさそうだ。
様似
様似市街に入り、コープを発見する。ここで晩飯と朝飯を買おうと思うが、とりあえず、様似周辺の立ち寄り先を見て、キャンプ場にテントを張って、それから買い物に戻ってこようと思う。
14:33 様似駅に到着。この駅は日高線の終着駅。なぜここが終着駅なのか、小学校の頃から疑問だった。日高支庁(振興局)のある浦河でもなく、日高最東端のえりもでもない。中途半端なところで終わっている。
だが、今日、襟裳岬から様似に来てみて、その理由は「日高耶馬渓」周辺の断崖のせいではないかと思う。
今の技術なら難しくないが、鉄道を敷設した当時はやはり難所で、えりもまで延伸したいが、様似までが限界だったではないかと想像する。
しかし、この日高線の鵡川から様似の間は、4日前に通った根室線の東鹿越と新得の間と同様、相当前に、途中の橋が高波にさらわれて不通になり、バスが代行運転している。
そして今年になって、この鵡川と様似間は、廃線がほぼ決定的になったので、実質もう廃線になっていると言っていいぐらいだ。
そんなことを思いながら、駅舎の横に自転車を止めて、駅の左手にある立派なトイレで用を済ませる。
もう列車が来ることはないだろうホームに出てみると、右手100mぐらい先に日高線末端の車止めが見える。
鉄ちゃんらしい男性が1人、線路の車止めのほうから歩いてくる。そのままバスでどこかへ行ってしまった。
そしてもう1人、地元の人と思われるおじさんがいるが、何をしているのかよくわからない。鉄ちゃんに少し声をかけているようにも見えたが、定かではない。
14:43 様似駅を出発。次は「エンルム岬」か「観音山展望台」の近いほうに行こうと思う。
とりあえず、両方ともここから西にあるので、国道336号線を西へ走り始める。が、やっぱり、ここまで買い物に戻ってくるのが面倒臭くなったので、コープに行くことにする。
反転して戻る途中の信号待ちで、交差点から正面にアポイ岳が見える。
アポイ岳は、山頂に向かって大きな岩の道があることをビジターセンターで学習してきた。それがよく見えるし、それでアポイ岳ということがすぐにわかる。街中ではあるが、信号待ちの時に写真を撮っておく。
コープで弁当とパン、コーラを買って、駐輪場でリュックに荷物を詰めていたところ、「こんにちは」と声をかけられる。
こちらも顔を上げる前に反射的に「こんにちは」と挨拶を返す。そして、顔を上げて隣をパッと見ると、自転車が止まっていて、その横に若め(30歳ぐらい?)の男性がいる。声をかけてきたのは、その自転車の持ち主である男性で、ちょうど買い物をして店から出てきたようだ。
その自転車をよくみると、リアにボストンバックのような大きなバックをつけている。前かごもついているが、後側とは対照的に、飲み物やお菓子、ゴミ?のようなものが適用にパラパラ入っている程度だ。
自転車旅をしている雰囲気だったが、声をかけられるまで、その自転車に気づかなかった。店に来た時、その自転車はなかったと思う。
その人は自分の自転車をチラ見して、早々に去っていく。どちらに向かったかは見ていないのでわからないが、あの荷物でこの時間なので、この近くのキャンプ場ではないかと思う。
店を出発し、国道336号線を西へ進む。「エンルム岬」も「観音山展望台」もだいたいの場所はわかっているが、正確な道順までは知らない。案内標識があるだろうと思い、進む。
「どっちの案内標識が先に出てくるんかな?」
と思って走っていると、左前方に岬というより岩山のような塊と、それに上っていく道が見えてくる。間違いなく、あれが「エンルム岬」だろう。
エンルム岬
国道に「エンルム岬」への案内標識は見当たらないが、道路の海側にはだだっ広い空き地が広がっているので、案内標識がなくても岬の方向はわかる。
岩山に向かう道へ左折する。しばらく住宅地の中を走ると、旅館の前に「エンルム岬」への小さな案内板がある。案内板に従って左折、少し上ると今度は右折の案内板がある。
右折した先はかなりの急坂で、車1台が通れるほどの狭い道。急坂の先に電波塔と、さらに上へ登る急階段が見える。
急坂なので、自転車を案内板のところに立てかけて、ここからは歩いて上ることにする。リアキャリアのリュックに括り付けてある食料がカラスに狙われないか少し心配だが、買い物袋は小さなマイバックに入れ、さらにその上に洗濯物のTシャツを被せているので大丈夫だろう。
地図を見ながら急坂を上っていると、いきなり後ろから軽くクラクションを鳴らされる。振り向くと、車が急坂を上ってきている。ここを車が上ってくるとは思ってもいなかったので全然気づかなかったし、ちょっと驚きもする。
坂を上りきると、電波塔と車を止められるスペースがあり、さっきの車が止まっていてる。運転手のおじさんが車を降りて周りの風景を眺めている。
そんなに高い場所ではないが、周りに高い建物や木々がないので、十分眺めがいい。自分も周りを眺めたり、写真を撮ったりする。
国道を挟んだ反対側の山に展望台のようなものが見える。あれが「観音山展望台」だろう。思っていたより、結構、上にあり、今いるここより高いところにあるようだ。
あそこまで行くとなると、かなり坂道を上らされるし、多分、展望台までは階段もあるだろう。この膝で「エンルム岬」に続いて「観音山展望台」に上るのはちょっと厳しかもしれない。
とりあえず、ここ「エンルム岬」の展望台に続く階段を上ることにする。
膝は痛いが、昨日に比べるとだいぶマシになった。上りは左足でも片足で一段ずつ上れるようになってくる。ずっとは続けられないので、途中で両足で一段ずつ上るようにする。
15:29「エンルム岬」展望台に到着。
展望台は岬の先端ではなく、真ん中辺にあり、しかも知ってはいたが、スペースが狭く六畳間ぐらいしかない。誰もいないので、狭さは問題なし。
ただし、眺めはかなりいい。
西には、中腹に雲がかかっているアポイ岳やピンネシリの山並み、岬から様似市街や日高耶馬渓に向かって弧を描く海岸線、東には様似漁港と観音山、親子岩に塩釜ローソク岩、浦河方向の海岸線が見え、これら全部を太平洋も含めて一望できる。
観音山にある展望台は、ここと同じぐらいの高さにあるように見える。
「漁港の中にも大きな岩があるが、あれには名前がないのか?」とか「『エンルムチャシ跡』という標識が立っているが、あれは何?」など疑問もわくが、それはさておき、とりあえず景色を楽しむ。
あとで調べると、漁港の中の岩は「ソビラ岩」といい、「エンルムチャシ」は「岬(突き出た頭)の砦」という意味で、アイヌの見張場があったらしい。
上の景色が入る(陸側180°ぐらい)パノラマ写真も撮ってみる。狩勝峠ではうまく水平に撮れなかったが、それよりはマシに撮れたと思う。
かなり眺めのいい展望台だが、自分がいる間は、あの車の人を含めて誰も上って来なかった。
15:34 展望台を出発。下りは、両足で一段ずつ下りる。
電波塔のある下まで降りると、あの車はまだ止まっていて、運転手のおじさんも車の中にいる。ちょっと休憩だけしに来ただけなのだろう。
自転車まで戻る。幸い弁当はカラスや海鳥に襲われていなかった。
国道336号線に復帰し、「親子岩ふれ愛ビーチ」方向へ走りつつ、「観音山展望台」の案内標識を探す。
観音山の前を過ぎたところで、左側に「←親子岩ふれ愛ビーチ100m」、右側に「観音山展望台→」の案内標識がほぼ同時に現れる。
とりあえず、すぐ先にある「観音山展望台」への分岐道をパッと見てみると、予想通り長い坂が続いている。
「エンルム岬」を出発してから「観音山展望台」に行く気が少しづつ萎えていたが、ここに来て、一気にその気が失せる。
自転車で坂道を上る分にはまだいいが、その先には多分、エンルム岬のように階段か坂を徒歩で上ることになるだろう。この膝で、続け様はちょっとツライ。
ということで、「観音山展望台」はパスして、「親子岩ふれ愛ビーチキャンプ場」に向かう。
「観音山展望台」の分岐のすぐ先で左折する。
親子岩ふれ愛ビーチ
15:53「親子岩ふれ愛ビーチキャンプ場」に到着。すぐ目の前の海に、ちっちゃい岩、デッカイ岩、馬鹿デカイ岩の3つの岩からなる「親子岩」がある。
海でキャンプしたいなら、ここは好立地だと思うが、今日はテントが1つもないし、人影もゼロ。カラスしかいない。
ここは海水浴場でもあるが、お盆を過ぎたので、もうシーズンオフ。キャンプする人は少ないだろうと思って来てみたが、ゼロとは思わなかった。
とりあえず、どこにテントを張るか考える。
ここのキャンプ場は海岸にあるので、ひょっとしたら砂地のテントサイトではないかと思っていたが、芝生の平坦な場所で問題なし。スペースもまあまあ広いと思うが、海水浴シーズンなら狭いかもしれない。
海岸なので、できれば風が避けられる場所がいいのだが、どこにも風除けとなるものがない。天気予報を確認すると、今日明日の風速は1, 2mなので、あまり心配する必要もなし。どこにテントを張ってもよさそうだ。
砂浜の前には「海水浴場は終了」の看板があり、ロープも張ってあって入らないよう規制されている。
やはり、海水浴場は終わっているので、キャンプをしに来る人もいないようだ。
トイレ、炊事場、ゴミ捨て場は、道路側にかたまって建っているので、すぐにわかる。あとはシャワーだ。事前にこのキャンプ場にシャワー設備があることを確認している。
駐車場の向こうに大きな建物があるので、あの中にあるのだろう。シャワーの場所を確認しに行く。
その途中、駐車場の前にキャンプ場の注意書きの看板があるので読んでみる。
すると、そこには「シャワーの使用時間は午後4時まで」と書いてある。
「えっ、4時まで?、なんぼなんでも早すぎる。おかしい」
と思った直後、
「待てよ。ひょっとしてこのシャワーは海水浴用では?」
と思う。そう考えると「使用時間が午後4時まで」というのは、なんとなくわかる気がする。
そうなると、ここのシャワーはあくまでも海水浴用なので、海水浴場が終了している今は、もう使えないということになる。「イヤ、多分そうだろう」と確信する。
それを確かめるためにも、隣りの建物に行ってみる。
その建物の前まで来ると、自転車を押しているおじさんに声をかけられる。
おじさん:「空気入れ、持ってない?」
自分 :「ありますけど」
おじさん:「空気抜けちゃってさぁ。安売りしていたのを買ったばかりなんで、ムシ(ゴム)が悪かったんだろ。漁師の人がいればいいんだけどなぁ…」
自分 :「漁師???」
あちらの自転車は確かにほとんど汚れていない。いわゆる「ルック車」と呼ばれる自転車で、多分、空気を入れるバルブは英式タイプだろう。
自分 :「空気入れありますけど、その自転車のバルブには、多分、口があわないと思いますけど…」
自分の乗っている「Tern Eclipse X20」を含めスポーツタイプの自転車のバルブはだいたい仏式。なので持っている空気入れのヘッドも仏式タイプのものだ。
自分 :「ちょっと、キャップを取って見てもいいですか?」
おじさん:「あ〜、いーよー」
念のため、キャップを取って確かめさせてもらうが、やはり英式タイプだ。
自分 :「あ〜、やっぱりあわないですね。アダプターも持ってきてないしなぁー」
おじさん:「あ〜、やっぱり、いいやつは違うんだー」
自分 :「自転車屋なんか、この辺に多分ないだろうしなぁ…」
おじさん:「前はあったけど、今はない」
地方に行くとよく聞く話だ。去年の根室でもそうだった。他に自転車を売っていそうなところは…と考えると、
自分 :「あっ、ホーマックは?」
おじさん:「ホーマックは反対側でだいぶ遠い。うちが日高幌別だから」
街中にホーマックがあったことを思い出したが、ここから歩いて行くとなると、確かにかなり時間がかかりそうだ。おじさんの家のある日高幌別とは、真逆の方向だし。
自分 :「あとガソリンスタンドだったらあるかも…」
おじさん:「ガソリンスタンドも反対側で遠い」
自分 :「うぅ〜ん」
おじさん:「漁師の人がいればいんだけどなぁ…」
自分 :「????」
おじさん:「いやいや、いいんだ。歩いて帰るわ」
自分 :「役に立てなくてすいません」
おじさん:「なんもいいんだー。なんか空気入れ持ってそうだったんで聞いてみたんだー」
確かに「自転車で旅してます」感、丸出しなので、そう思うだろう。
おじさん:「今日はどこまでいく?」
自分 :「今日はここに泊まります」
おじさん:「あっそう。最後はどこまで?」
自分 :「◯◯まで帰ります」
おじさん:「◯◯かー」
おじさんとは、そこで別れる。本当に手助けできなくて残念だった。
しかし、そのおじさんは何度となく「漁師の人がいればいいだけどなぁ…」と言っていたが、漁師の人は自転車の空気入れを持っているのだろうか?意味がよくわからなかった。
それはさておき、目的のキャンプ場の隣にある大きな建物だが、やはり閉まっている。
「さてどうするか?」
風呂なしでここに泊まるか、「アポイ山麓ファミリーパーク」に変更するか、それとも今から宿を探すか、の3択だ。
ほぼ迷いなく、「アポイ山麓ファミリーパーク」のキャンプ場に決定。
16:11「アポイ山麓ファミリーパーク」に向けて出発。
炭酸がなくなったので、さっきも買い物をした様似のコープで、さっきも買った安売り中のコーラを買う。
海岸線を今度は逆向きに走っていると、パンクした場所を通過。また通るとは思ってもみなかった。
アポイ山麓ファミリーパークキャンプ場
16:48「アポイ山麓ファミリーパーク」に到着。駐車場には車が3台しか止まっていない。ヒグマが出没するかもしれないので若干心許ないが、仕方ない。
バンガローのあるほうから入ると、入口に「キャンプ場の受付はアポイ岳ジオパークのビジターセンター」と書いてある。それは知らなかった。
「ここから結構、とぉーいーぞ。あそこまで、また上るのか…」
と少しウンザリしたので、とりあえずサイトの中を見てみることにする。
自転車を押してサイトの中に入ると、大きめの炊事場があり、その横に自転車を止める。
その炊事場の近くにテントが1張りあって、夫婦と思われるキャンパーはすでに食事中だ。そして、奥に行くとソロのテントが2張りある。どこのテントも、木製のテーブルとベンチがある横に陣取っている。
さて、どこがいいだろうと考えながら、そのまま歩いてサイトを抜け、さらに駐車場を通ってビジターセンターに向かう。
ビジターセンターの受付でキャンプ場使用の手続きをする。使用料は600円也。キャンプ場の地図と、テントにぶら下げておくキャンプ場の利用証をもらう。
利用証には、アポイ岳の写真に「アポイ山麓ファミリーパークキャンプ場来場記念」と書いてあるが、裏面には親子岩の写真に「親子岩ふれ愛ビーチキャンプ場来場記念」と書いてある。
あのまま「親子岩ふれ愛ビーチ」に泊まっても、同じものがもらえたようだ。
アポイ山荘の日帰り入浴の時間を聞くと、夜11時までとのこと。キャンプ場から山荘までは近道の階段があるが、夜は真っ暗なので明かりが必要。「足元には気をつけてください」とのことだ。
あと、昼間にエゾシカが敷地内を歩いていたことを伝えたが、別段どうということはなく、それが日常らしい。
17:04 キャンプ場に戻り、テントの張る場所を考える。
道路側の上の段にも2つのサイトがある。バンガロー側の予約専用サイト(受付で貰った地図には「キャンプ場C」)にも、炊事場やトイレのあるサイト(キャンプ場A)にもテントは1張りもない。
この広いキャンプ場にあるテントはポンサヌシベツ川側(キャンプ場B)の3張りのみ。
ということで、昨日の「百人浜オートキャンプ場」のように「付かず離れず」の場所で、撤収の時にテントが干せるテーブルやベンチの近くがいいだろう。
結局、「キャンプ場B」の炊事場横にある夫婦連れテントと奥に2張りあるテントの間で、奥のテント寄りに、自分のテントを張ることにする。
すぐ横にテーブルとベンチがあり、炊事場にも近い。トイレは上の段のサイトにあり、階段の昇降がちょっと難儀だが、そう遠くはない。
テントを張っていると、ソロの若いチャリダーが立て続けに二人やって来て、自分たちとは少し離れた川側の、やはりテーブルとベンチの横に、互いに距離をとって陣取り始める。
そういえば、様似のコープで声をかけてきた自転車旅の男性は「親子岩ふれ愛ビーチ」にも、ここ「アポイ山麓ファミリーパーク」にもいなかった。どこまで行ったのだろうか?
一方で、炊事場横にテントを張り、テーブルで食事中の年配の夫婦のうち、おばちゃんのほうが、こっちに振り返り、ず〜っと自分のほうを見ながら食事をしている。自分が自転車でここに到着してから、テントを張り終えるまで「ず〜っと」振り返ったままだ。
自転車で来てキャンプをしている姿が、そんなに珍しいのだろうか。真意はわからない。
テントを張り終えた後、まずは上の高台あるアポイ山荘の日帰り入浴へ向かう。帰りは真っ暗になるので自転車のライトも持っていく。
キャンプ場の受付でもらった地図に書いてある近道の階段を通っていくが、所々ドロドロになっているところがあったり、幅が狭いところもある。膝が痛いので慎重に歩く。
日が落ちれば真っ暗で、しかもこのドロドロの階段だ。ライトの灯りとこの膝では、酷いことになるかもしれないので、帰りは道路からまわろうと思う。
階段を上り切ると、アポイ山荘の駐車場に出る。止まっている車は多く、コロナの中とはいえ、まずまず盛況のようだ。
「ホテルアポイ山荘」の中に入る。日帰り入浴(温泉ではない)料は500円也。
脱衣所で、鍵付きロッカーに財布やスマホなど貴重品を入れようとするのだが、100円玉を入れてもすぐに出てきてしまう。本来なら100円入れて鍵をまわせば、閉まるはずだが…。壊れてると思い、別の2箇所でもやってみるがどちらも同じ。
「うぅ〜ん」
と唸りつつ、さらに別の4箇所目にチャレンジしてみるが、今度はそもそもお金が入らない。これもハズレのようだ。
そして決して諦めることなく、5箇所目のロッカーにチャレンジするが、ここもお金が入らない。5回続けてのハズレ、当たりがあるのだろうか?
5箇所目のロッカーで苦戦していると、苦闘の一部始終を見ていたと思しき、地元の常連さんらしいおじさんがやってきて、
おじさん:「いや、それ、お金入れなくても鍵かかるよ」
といい、実際にやって見せてくれる。
おじさん:「これ(ロッカー)、ほとんど壊れてるんだー」
自分 :「ありがとうございます」
とお礼を言う。また一つ、この歳になって勉強させてもらう。
そもそもこういう貴重品用のロッカーに100円を入れる意味がどれくらいあるのかと前から疑問に思っている。
どうせ、ロッカーを開けるときにはお金は戻ってくるのだから、この壊れているロッカーのようにお金をいれなくて鍵がかかればいいように思う。
などと、ブツブツ思いながら、まずはちょっとだけ内風呂に入る。外に出ても寒くならない程度に温まってから、露天風呂に出る。
先客は意外と少なく一人だけ。しばらくすると、その人も出て行く。内風呂にはそれなりに人がいるのだが、そのあとも誰も露天には入ってこない。
完全に貸切状態なので、湯船に入ったり出たりしながら、のんびり過ごす。お湯の中で膝を屈伸しても全く痛くない。筋肉が温まっているせいだろうか?
このアポイ山荘の露天風呂だが、あとで調べると「カンラン岩」を使った岩風呂だったようだ。さすがはアポイ岳。だが、その時は全然気にもとめていなかった。
19:19「ホテルアポイ山荘」を出る。1時間ほどの長湯だった。帰りは自転車のライトをつけながら真っ暗な道路を歩いて帰る。
ヒグマと、すっ飛ばしている車に警戒しながら、無事にキャンプ場へ戻る。
テントに戻り、まずは洗濯して、その後晩飯を食う。
今日も21時間には寝袋に入る。明日は新冠まで。
== 旅の費用 ===============
キャンプ場(アポイ山麓ファミリー)代:¥600
入浴(ホテルアポイ山荘)代 :¥500
飲食代 :¥1,322
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合計 :¥2,422
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